企業向けに、オンラインセミナーを開催しました。テーマは、近年の改正法の中でも特に注目される「取適法(改正下請法)と「AI新法」です。
前半の取引適正化法については、改正の背景・目的から、改正のポイントと対応のチェックポイントまで解説しました。
後半のAI法規制については、生成AIがどのような業務に利用できるのかに加え、国内外の規制動向を踏まえて利用の際にどのようなポイントに気を付けるべきかを解説しました。
セミナーの最後には、アンケートにご回答いただき、満足・大変満足とのご回答をいただきました。
セミナーを開催した背景と目的
企業の法務・労務担当者にとって、2026年は「取引ルール」と「業務フロー」の大転換期となります。 今回のセミナーは、目前に迫った「2つの法的な実務課題」への具体的な対応策を共有するために開催しました。
1つ目は、令和8年1月1日に施行される下請法の改正である取適法への対応です。
これは従来の下請法を抜本的に改正するもので、単なる名称変更ではありません。「手形払いの原則禁止(60日以内の現金化)」や「適用対象の拡大(従業員300人以下の事業者への委託も対象)」など、企業のキャッシュフローや契約実務に直接的な影響を与える変更が含まれています。
2つ目は、急速に普及する「生成AI」に伴う法的リスクとマーケティングの変化です。
業務効率化のためにAI導入が進む一方で、著作権侵害などの法的トラブルのリスクが高まっています。また、検索エンジンに代わる「AI検索(SGE)」の台頭により、従来のSEO対策だけでは顧客に到達できないという、集客実務上の切実な課題も浮上しています。
本セミナーでは、これら「待ったなし」の実務課題について、当事務所の弁護士が法的観点から具体的な解決策を解説いたしました。
セミナーの内容
1. 下請法がなくなる!?~令和8年1月1日からの取適法~
(1) 改正の背景
改正法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称「取適法」となります。
単なる名称の変更ではなく、「下請」という上下関係を払拭し、ビジネスパートナーとしての対等性を重視する流れが加速しています。
また、改正の目的は、構造的な価格転嫁の実現です。
(2) 改正のポイント
改正のポイントは3つです。
① 規制対象の拡充
従業員基準の導入と、特定運送委託の新設がされました。
② 規制内容も追加
手形払いの禁止など、受託者が短期間に満額の代金を得ることができる方法とする必要があります。
③ 執行面の強化
事業所管官庁の指導助言権限が付与されました。
(3) 対応のチェックリスト
委託側、受託側の双方の立場から、改正に対応するためのチェックリストを公開し、そのポイントを解説しました。
2. AI新法
(1) 生成AIの概要
日本における「AI新法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)」は、罰則中心の厳しい規制法ではなく、イノベーションを促進するための基本理念などを定めた法律です。
ただし、AI新法に罰則がなくとも、著作権法、個人情報保護法、不正競争防止法など、既存の法律はAI利用時にも適用されるため、注意が必要です。業務で利用するためには、リスクについて正しく理解し、対策をすることが重要です。
(2) AI利用とリスク管理
業務でAIを利用する際には、情報漏洩などのリスクもあります。
セミナーでは、社内におけるAI利用のリスクを減らすために最低限必要な対策等を解説しました。特に、社内での機密情報や個人情報の入力については注意が必要です。
(3) AIO
これまでWEBマーケティングといえば、検索エンジンで上位表示を狙う「SEO対策」や、マップ検索向けの「MEO対策」が主流でした。
しかし、生成AIによる検索に代表されるように、今後はユーザーの質問に対してAIが直接回答を生成する時代へとシフトしていきます。つまり、「AIに信頼できる情報源として選ばれ、回答の中で引用される」ことが重要になるのです。
公式サイトの情報を充実させ、正確で質の高い情報を発信し続けること、そして口コミなどの客観的な評価を積み上げることなどの地道な信頼の蓄積が、AI時代におけるマーケティング対策(AIO)においても重要となります。
これまでは影響の少なかった小さなサイトの口コミであっても、AIの概要に表示されることがありますので要注意です。