交通事故裁判の実務

開催日時:
2019年07月26日 15:00 〜 17:00
セミナー分類:
交通事故
主催:
一般社団法人千葉県損害保険代理業協会千葉支部
講師:
今村 公治 今村 公治のプロフィール
対象者:
保険代理店

交通事故裁判の実務

セミナー報告

保険代理店様向けに「交通事故裁判の実務」というテーマでセミナーを実施しました。

具体的には、次のテーマで解説しました。
① 交通事故で弁護士が関わると何が変わりますか?
② 裁判するかしないかは、何を基準に判断するんですか?
③ 実際の裁判はどのように進むのですか?
④ 交通事故紛争処理センターとはどんな手続きですか?
⑤ 交通事故紛争処理センターを利用すると、実際どのように進むのですか?
⑥ 自営業者、会社役員だと注意点やアドバイスはありますか?
⑦ 症状固定日や治療費打ち切りの意味を教えてください。
⑧ 整骨院や接骨院に通うときのアドバイスはありますか?
⑨ どういう交通事故のときに、弁護士に相談・依頼したほうがよいですか?

セミナーを開催した背景と目的

保険代理店の皆様は、日々の業務でご契約者様から交通事故に関する質問を受けることが多くあると思います。

ただ、実際に交通事故の裁判を経験された代理店様は少ないと思います。

そこで、保険代理店様向けに、交通事故の裁判実務について解説しました。具体的な解決事例をご紹介しながら、実務の運用までご説明しました。

セミナーの内容

1. 交通事故で弁護士が関わると何が変わりますか?

弁護士が関わると、①慰謝料が増額しやすい、②適切な後遺障害になりやすいなどの変化があります。
① 慰謝料が増額しやすい
慰謝料などの賠償額の交渉を弁護士が行うことで、受領できる賠償金額が増額することが多いです。

そのため、慰謝料を増額したいときは弁護士に相談や依頼をしたほうがよいでしょう。

② 適切な後遺障害になりやすい

後遺障害が残りそうな重症の場合、早めに弁護士に相談して、適切な治療や検査のアドバイスを受けておくとよいです。

適切な後遺障害が認定されるかどうかで賠償額が大きく異なります。そのため、後遺障害申請をするときは弁護士のサポートを受けたほうがよいでしょう。

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2. 裁判するかしないかは、何を基準に判断するんですか?

交通事故の賠償請求で裁判するかどうかは、被害者ご本人の意向によります。

裁判をすると解決までに時間がかかるというデメリットがあります。

また、事情によっては保険会社の提示額よりも低い金額になる場合もあります。そのため、裁判するかしないかは、詳しい弁護士に相談してから検討したほうがよいです。

3. 実際の裁判はどのように進むのですか?

請求する側が裁判所に訴えを提起します。

その後、双方が主張・反論を繰り返します。裁判は大体月に1回程度の頻度で開催されますが、お互いの主張が出尽くすまで裁判を重ねるため、長い間続きます。

お互いの主張反論が出尽くしたところで、法廷で当事者本人の話をきく「尋問」という手続きがあります。

裁判は和解で終了となるか、和解が成立しなければ裁判所が判決を下します。

4. 交通事故紛争処理センターとはどんな手続きですか?

交通事故紛争処理センターは、裁判外の紛争解決機関のひとつです。

話合いによる任意交渉よりも賠償金額が増額することがあります。

裁判をする場合と比べると賠償金額がやや低いことがありますが、裁判をするよりも早く解決することが多いです。

5. 交通事故紛争処理センターを利用すると、実際どのように進むのですか?

紛争処理センターは、裁判と比べると早期に解決できることが多いです。

裁判をすると解決まで半年から長いと2年くらいかかることもあります。紛争処理センターのあっせん手続は、事案によりますが半年くらいで解決することが多いです。

6. 自営業者、会社役員だと注意点やアドバイスはありますか?

① 自営業者の場合
休業損害や逸失利益の損害額は、事故前の収入額をもとに算定します。自営業者の事故前の収入額は、原則として確定申告額を基礎に算定します。

自営業者で確定申告をしてない場合や、確定申告の所得額が実際の収入と合致しない場合には、休業損害や逸失利益の金額が争いになりやすいです。

また、自営業者の収入額を算定するときに、所得金額に地代家賃などの固定経費を加えて計算することを忘れないように注意が必要です。

② 会社役員の場合

会社役員の場合、純粋な役員報酬については、事故で傷害を負っても減少しないことが多いです。そのため、休業損害が発生しないとされる可能性があります。

もっとも、会社役員の役員報酬については、労務提供の対価部分は休業損害として認められることがありますので、しっかり検討しましょう。

また、逸失利益についても休業損害と同じく、金額が争いになりやすいです。

7. 症状固定日や治療費打ち切りの意味を教えてください。

① 症状固定
症状固定とは治療によっても症状が改善しない状態のことを指します。

症状固定状態かどうかは主治医の判断を尊重します。最終的に争いとなったときは裁判所で決めます。

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② 治療費打ち切り

事故から3~6ヶ月経過すると、保険会社が治療費の支払を拒むことがあります。保険会社が病院への治療費の支払いを止めることを、治療費の打ち切りといいます。

治療費の打ち切りの打診があったときは、治療終了と治療継続のいずれにするかを検討しましょう。症状が残っているときは、後遺障害の申請も並行して検討しましょう。

8. 整骨院や接骨院に通うときのアドバイスはありますか?

整骨院に通院する場合には、病院と並行して通院しましょう。

また、病院で痛みやしびれなど、すべての部位と症状を主治医の医師に申告しましょう。

病院と整骨院とで診察内容がちがうと、整骨院の施術費用の支払いを打ち切られる可能性があります。

9. どういう交通事故のときに、弁護士に相談・依頼したほうがよいですか?

交通事故賠償の流れを知るために、けがをした被害者側の事故のときは、弁護士に一度相談したほうがよいでしょう。

特に次のような場合、弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
① 保険で弁護士費用特約に加入している場合
② けがが重度の場合
③ 後遺障害が認定された場合

参加者の声

  • 交通事故のいろいろな話をきけて勉強になりました。
  • 裁判のメリットとデメリットがよくわかりました。
  • とても参考になりました。

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