保険代理店の皆様を対象として、交通事故の過失割合の実務についてのセミナーを開催しました。
具体的には、次の点を解説しました。
1. 過失割合の基本ルール
① 過失とは
② 過失割合は誰が決めるのか?
③ 過失割合の決まり方
2. 事実認定のポイント
① 実況見分調書
② ドライブレコーダー
③ 防犯カメラ
④ 目撃者
⑤ 工学鑑定
3. 評価の問題
① 評価はどのように行われるか?
② 評価の注意点

セミナーを開催した背景と目的
よつば総合法律事務所では、保険代理店の皆様より交通事故の過失割合についてのご相談を多く受けています。
そして、多くのご相談のなかで、保険代理店の皆様が疑問に持つポイントがいくつかわかってきました。
そこで、保険代理店の皆様が、過失割合についてお客様と話をするときに役立つであろうポイントを整理してお伝えしたいと思い、今回のセミナーを開催しました。
セミナーの内容
1. 過失割合の基本ルール
① 過失とは
法律的な意味での過失とは、「損害発生の予見可能性があるにもかかわらず、これを回避する行為義務(結果回避義務)を怠ったこと」であることを解説しました。
② 過失割合は誰が決めるのか?
過失割合は当事者間での合意で決まります。当事者間で合意ができないときは、最終的には裁判所の判決で決まります。
警察や保険会社が過失を一方的に決めることはありません。
③ 過失割合の決まり方
過失割合を決めるときは、まずはどのような事故であったか事実関係を確定します。次に、その事実関係によれば過失割合が何対何かという法的評価を確定します。
2. 事実認定のポイント
事実認定の一番のポイントは「論より証拠」です。いかに自分に有利な証拠を集めるかが重要です。
①実況見分調書②ドライブレコーダー③防犯カメラ④目撃者⑤工学鑑定などが重要な証拠となりえます。
① 実況見分調書
実況見分調書とは、事故の当事者や参考人の立会いのもとで現場の状況や事故の発生状況の調査を行い、調査結果を警察官がまとめた書類です。
実況見分調書の作成前であれば、次のような点に注意しましょう。
- 警察官に正しく事実を伝えること
- わからないことは「わからない」と正直に言うこと
- 細かい点でも誤りがあれば修正してもらうこと
② ドライブレコーダー
ドライブレコーダーは証拠としての価値が高いです。
自分の車にあるときはデータ紛失がないよう管理しましょう。相手の車にあるかもしれないときは、事故時や事故後早めの段階で確認しましょう。
ドライブレコーダー画像があるにもかかわらず当事者間で共有しないと、「何か隠しているのではないか?」と疑われて不利になる可能性がありますので注意が必要です。
③ 防犯カメラ
重大な事故でない限り、防犯カメラを警察は調査してくれないことが多いです。次のような方法を検討してみましょう。
- 警察官に正しく事実を伝えること
- 防犯カメラの管理者に画像の開示をお願いしてみる。
なお、一定期間が経過すると、防犯カメラ画像は削除となることが多いです。早期の対応が重要です。
④ 目撃者
第三者の目撃者の証言も、重要な証拠となることがあります。事故現場で目撃者を見つけた場合には、連絡先を聞いておきましょう。
⑤ 工学鑑定
専門業者に工学鑑定を依頼する方法もあります。双方の車の速度などがわかることがあります。ただし、必ず鑑定できるわけではありませんので注意が必要です。
3. 評価の問題
① 評価はどのように行われるか?
客観的な事故状況を確定した後は、その事故状況がどのような過失割合になるか評価します。
民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版(別冊判例タイムズ38号)という典型的な事故状況をまとめた本を使って評価することが一般的です。
② 評価の注意点
別冊判例タイムズ38号は、過失割合の決定のために広く使われています。
しかし、個別事案ごとの検討を忘れてはいけません。過失割合に納得できないときは弁護士に相談するなどの対応をおすすめします。