消費者関連法の概要(司法修習生選択型実務修習、2022年2月22日開催)

開催日時:
2022年02月22日 10:00 〜 15:00
セミナー分類:
その他
主催:
千葉県弁護士会
講師:
根來 真一郎 根來 真一郎のプロフィール
開催会場:
千葉県弁護士会
対象者:
司法修習生

消費者関連法の概要(司法修習生選択型実務修習、2022年2月22日開催)

セミナー報告

セミナー開催趣旨

2022年2月22日、千葉県弁護士会にて、司法修習生向けにセミナーを開催しました。

千葉県で司法修習をしている司法修習生の選択型実務修習において、千葉県弁護士会の消費者問題委員会に所属している弁護士らで消費者関連法の概要を解説しました。あわせて、具体的な事例も解説しました。

その後、模擬法律相談を実施しました。

さらに製品事故被害の実態について、被害者遺族にお話をいただきました。

近年は本研修を毎年担当させていただいており、本年は消費者契約法と模擬相談を担当しました。

<講座目次>

  1. 消費者契約法の基礎知識
  2. 特定商取引法の基礎知識
  3. 割賦販売法とその他の消費者保護ルール・機関
  4. 模擬法律相談
  5. 製品事故被害について

概要

1. 消費者契約法の基礎知識

消費者契約は、事業者から消費者を守る法律です。不当な勧誘の契約を「取消する」効果と、不当な契約条項を「無効」にする効果があります。

(1) 取消できるケース
不当な勧誘により契約したときは取消ができます。たとえば次のようなときです。
① 知識のない消費者を「誤認」させて契約
② 悪質な勧誘をし、消費者が「困って」契約
③ 消費者の弱みに「つけ込んで」契約
(2) 無効になるケース
契約条項が消費者に不利で不当なときは、その条項は無効です。たとえば次のような条項です。
① 事業者の損害賠償責任を免除する条項
② 消費者から解除権を奪う条項
③ 不当な損害額(平均的損害を超える損害)、不当な遅延損害金を請求する条項
④ 後見制度の利用を理由に契約を解除する条項
⑤ その他、消費者の利益を一方的に害する条項
(3) 情報格差
取消ができる契約について「情報格差」「交渉力の格差」を解説しました。消費者が事業者と同じ情報を持つのはそう簡単ではありません。

情報格差については、次のようなケースがあります。

① 事業者の「嘘の情報提供(不実告知)」
② 「断定した判断の提供(断定的判断の提供)」
③ 「情報隠し(事実不告知)」
交渉力の格差については、次のようなケースがあります。
① 不退去
② 退去妨害
③ 過量契約
④ 社会経験不足の不当利用…不安を煽る告知、好意の感情の不当な利用
⑤ 加齢等による判断能力の低下の不当利用
⑥ 霊感などによる知見を用いた告知
⑦ 契約締結前に債務の内容を実施
(4) 消費者契約法その他
実際に取消にあたる事例をいくつか紹介し、より分かりやすく具体的に解説しました。さらに、適格消費者団体と消費者契約法が問題となる事例を紹介しました。

2. 特定商取引法の基礎知識

特定商取引法(特商法)とは、トラブルの多い取引類型について、消費者の被害防止・救済のために、通常よりも厳しいルールを定めた法律です。取引類型は次の通りです。

  • (1) 訪問販売
  • (2) 電話勧誘販売
  • (3) 通信販売
  • (4) 特定継続的役務提供
  • (5) 連鎖販売取引
  • (6) 業務提供誘引販売
  • (7) 訪問購入
  • (8) ネガティブオプション

それぞれにつき、概要を説明し、事例をご紹介しました。その上で、「効果」の在り方を検証しました。

3. 割賦販売法とその他の消費者保護ルール・機関

(1) 割賦販売法
割賦販売法は、クレジットに関するルールを規定した法律です。次のような内容を解説しました。
① クレジットカードを悪質業者に利用された例
② カード型と個別クレジット型についての支払い停止の抗弁

(2) 景品表示法
景品表示法(景表法)は、不適切な広告表示等により、消費者が実際には質の良くない商品やサービスを買う等の不利益を防止する法律です。次のような内容を解説しました。
① 表示等の解説
② 課徴金制度

(3) 消費者保護機関の基礎知識
適格消費者団体や特定適格消費者団体など消費者保護機関の基礎知識を解説しました

終盤には、消費者問題に対応するために模擬法律相談を行い、製品事故被害について被害者遺族にお話しをいただき、セミナーを締めくくりました。