高齢者施設の労務で気をつけるべきポイント~過去の裁判例から学ぶ

開催日時:
2023年05月30日 18:00 〜 19:00
セミナー分類:
企業法務
主催:
ドクターメイト株式会社
講師:
川﨑 翔 川﨑 翔のプロフィール
開催会場:
オンライン(Zoom)

高齢者施設の労務で気をつけるべきポイント~過去の裁判例から学ぶ

セミナー報告

内容

インハウスの弁護士として創業時から関わっているドクターメイト株式会社主催の高齢者施設向けウェブセミナーに登壇しました。

前回セミナー(解雇・退職勧奨について)の復習から、これまで裁判例としてあまり取り上げられることのなかったオンコール待機に残業代が発生するのか、というテーマでお話ししました。

特に、訪問看護ステーションのオンコール待機について、残業代を認めたアルデバラン事件(横浜地方裁判所令和3年2月18日判決)は現場に与える影響が極めて大きいと思われます。

オンライン形式でしたが、途中で参加者の方から意見をうかがうなど、双方向で進めることができました。

概要

【第1部】ドクターメイト株式会社からのご案内
【第2部】介護事業所の労働条件における問題
1.厚生労働省神奈川労働局の調査から
2.時間外労働の割増賃金率が改定
【第3部】判例から学ぶ 介護事業所の労働条件で気をつけるべきこと
1.前回の復習(労働事件の現実)
2.残業代請求の対応
3.労働時間とは? 三菱重工長崎造船所事件(最高裁判所平成12年3月9日判決)
4.オンコールと残業代① 奈良病院事件(奈良地方裁判所平成27年2月26日判決)
5.オンコールと残業代② アルデバラン事件(横浜地方裁判所令和3年2月18日判決)
6.残業代請求 対応のポイント
【第4部】ディスカッション

本セミナーに関連する質問と回答

Q 三菱重工長崎造船所事件で裁判所は労働時間をどのように判断しましたか?
A 「労働基準法第32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。」と裁判所は判断しました。(最高裁判所平成12年3月9日判決)
Q 奈良病院事件で裁判所は医師のオンコール待機の残業代をどのように判断しましたか?
A 医師のオンコール待機に残業代は発生しないと判断しました。理由は次の通りです。
①宅直当番は、内規等に定めのない勤務医による自主的な取決めであったこと
②宅直当番の担当を定める場合、割当てを行うこととなっていた医師が各医師の負担等を考慮しながら割り振っていたこと
③宅直当番の担当医師が病院に対して報告等をしていないこと
(奈良地方裁判所平成27年2月26日判決)
Q アルデバラン事件で裁判所は訪問看護の看護師のオンコール待機の残業代をどのように判断しましたか?
A 訪問看護の看護師のオンコール待機に残業代が発生すると判断しました。
①緊急看護対応業務・同待機業務は「労働時間」に該当
②割増賃金の元金として990万7484円を認定
③付加金783万2119円の支払義務
(横浜地方裁判所令和3年2月18日判決)
Q 2023年4月からの割増賃金率の改定とは何ですか?
A 今年4月から改正労働基準法に伴い、月当たりの時間外労働時間(1日8時間、週40時間を超える分)が60時間超の場合、超えた分の時間給の割増賃金率が一律50%になりました。

参考リンク