社労士の先生方が知っておきたい司法の世界

開催日時:
2023年05月20日 13:15 〜 15:30
セミナー分類:
企業法務
主催:
社会保険労務士の先生の勉強会
講師:
根來 真一郎 根來 真一郎のプロフィール
開催会場:
蘇我コミュニティセンター
対象者:
社会保険労務士の先生方

社労士の先生方が知っておきたい司法の世界

セミナー報告

「社労士の先生方が知っておきたい司法の世界~事前にいただいたご質問を中心に~」と題する勉強会を開催しました。事前に質問を募集し、質問に弁護士が回答しました。

約20名の社会保険労務士の先生が参加しました。15時が終了予定時間でしたが議論が白熱し、時間を延長しての開催となりました。

ご参加いただいた皆様ありがとうございました。 

概要

  1. 裁判所
  2. 刑事事件
  3. 民事事件
  4. 人事労務
  5. 弁護士法72条
  6. その他法律全般

1 裁判所
裁判組織に関する事項や民事訴訟と刑事訴訟の違い、判例の読み方を解説しました。

  • 最高裁場所や高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所、家庭裁判所といった裁判所の構造
  • 民事事件と刑事事件における控訴や上告を扱う裁判所の違い
  • 判例独特の言い回し

2 刑事事件
執行猶予や裁判員制度を解説しました。

  • 執行猶予制度の概要
  • 執行猶予の条文や執行猶予の効果
  • 国家資格を保有している場合の欠格事由
  • 裁判員裁判の概要
  • 裁判員候補者の辞退率上昇の問題
  • 裁判員候補者の出席率低下の問題

3 民事事件
裁判期日における具体的なケースを解説しました。

  • 口頭弁論で行うこと
  • 弁論準備手続で行うこと

4 人事労務
労働審判制度に関する現状や解雇無効となった場合の解決金相場、労働判例の読み方を解説しました。

  • 人事労務の紛争解決手続きの全体像
  • 労働審判の概要
  • 最新の統計に基づく労働事件の件数の推移や審理期間の推移、解決金額の分布、金額に影響を及ぼす要因
  • 労働判例の注目点

5 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止(弁護士法第72条)
弁護士業務と社労士業務の共通点や相違点、境界線を解説しました。

  • 非弁護士の法律事務の取扱い等を禁止する弁護士法第72条の解説
  • 弁護士法第77条の罰則規定(2年以下の懲役又は300万円以下の罰金)
  • 社会保険労務士が労働紛争事件の相談をすることの可否
  • 社会保険労務士が示談交渉を代理することの可否
  • 社会保険労務士が団体交渉を代理することの可否
  • 社会保険労務士が裁判手続を代理することの可否

6 その他法律
誤りやすい裁判用語の使い分けや裁判傍聴を解説しました。

研修会に関連する質問と回答

Q 解雇事案の労働審判や裁判上の和解の解決水準はどの程度ですか?
労働審判の中央値は150万円、裁判上の和解の中央値は300万円です。金額は上昇傾向です。
詳細な内容は労働審判及び裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析(独立行政法人労働政策研究・研修機構)をご確認下さい。
Q 労働審判と民事裁判ではどちらが良いですか?
事案によります。労働審判の方が解決金額が低額になる傾向があります。会社側の場合には労働審判が望ましいでしょう。ただし、徹底的に争いたい事案のときは裁判が望ましいでしょう。
Q 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止に違反すると刑罰はどのようになりますか?
  • 2年以下の懲役又は300万円以下の罰金となることがあります。
Q 弁護士会から弁護士法違反の警告がきました。どうすればよいですか?
  • 社会保険労務士会に相談しましょう。知り合いの弁護士にも相談しましょう。

【解説】

  • 弁護士会と社会保険労務士会は、弁護士法違反について異なる見解を取っていることが多いです。そのため、弁護士会から警告がきたときは社会保険労務士会の見解をまず確認しましょう。
  • 弁護士会からの警告がきたときにどうなるかは弁護士がよく知っています。多くの事案では違法行為があったとしても真摯に謝罪をすれば大きな問題になりません。現実的な実際の対応は知り合いの弁護士と相談しながら進めましょう。
Q 労働紛争が発生しそうです。自分で対応するのと弁護士を紹介するのとどちらが良いですか?
  • 弁護士を紹介する方がトラブルになりにくいです。会社側の立場で労働問題を多く取り扱っている弁護士に相談しましょう。
Q 民事事件の控訴と上告はどの裁判所に行えばよいですか?
次の裁判所に行います。

  • 第一審の地方裁判所の判決に不服がある場合
    高等裁判所に控訴
  • 第二審の高等裁判所の判決に不服がある場合
    最高裁判所に上告
  • 第一審の簡易裁判所の判決に不服がある場合
    地方裁判所に控訴
  • 第二審の地方裁判所の判決に不服がある場合
    高等裁判所に上告
Q 刑事事件の控訴と上告はどの裁判所に行えばよいですか?
  • 第一審の地方裁判所又は簡易裁判所の判決に不服がある場合
    高等裁判所に控訴
  • 高等裁判所の判決に不服がある場合
    最高裁判所に上告

参考リンク