(運送業向け)手遅れになる前に-負ける残業代とその対策-

開催日時:
2024年12月07日 16:00 〜 17:00
セミナー分類:
企業法務
主催:
一般社団法人千葉県トラック協会青年部会様
講師:
村岡 つばさ 村岡 つばさのプロフィール
対象者:
運送会社の経営者

(運送業向け)手遅れになる前に-負ける残業代とその対策-

セミナー報告

一般社団法人千葉県トラック協会様(青年部会様)よりお声がけいただき、運送会社の経営者向けに、残業代の研修を行いました。

トラック業界において頻発する残業代請求への実務対応について、会社側弁護士の視点から解説しました。

残業代請求のリスクや、日々の労務管理・給与制度の落とし穴を解説するとともに、今後の現実的な対応方針もお話しました。

多くの方にご参加いただきました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

研修を開催した背景と目的

よつば総合法律事務所では、企業様の労働問題を多く扱っております。中でも、「未払残業代」に関するご相談は非常に多いです。

以下の法改正もあり、未払残業代のリスクは年々高まっています。

  • 残業代の時効期間の延長(2年→3年に延長)(2020年4月~)
  • 中小企業の60時間超の時間外労働の割増率の増加(25%→50%)(2023年4月~)

特に運送業界においては、労働時間が長いことに加え、固定残業代や歩合給などが全面的に争われることも多く、請求金額も高額になる傾向があります。

私も、従業員数名から高額な残業代請求を受け、経営が立ち行かなくなってしまった運送会社の相談を何件も受けています。

「残業代請求で苦しむ運送会社を少しでも減らしたい」という思いから、今回のセミナーを実施しました。

今回の研修が、ご参加いただいた運送会社様にとって少しでも有益なものとなりましたら、大変幸いです。

研修の内容

① 残業代請求の雑感

このパートでは、残業代請求の背景事情や実情をお話しました。

労働者側の残業代請求を扱っている弁護士事務所は多く、特にここ最近は、「労働者側の残業代請求のみ」を扱う事務所も増えました。

インターネットで検索すると、様々な法律事務所がヒットします。

特に運送業界は、労働時間が長く、紛争化しやすい給与体系(固定残業代・歩合給)を採用していることもあり、請求額が高額になる傾向にあります。離職率も高いことから、労使紛争が顕在化しやすいです。

このような背景事情もあり、言葉を選ばずいうと、運送業の残業代請求が「狙い撃ち」されている状況です。

また、法改正の影響、特に時効期間の延長の影響は顕著であり、残業代の請求金額が非常に高くなりました。2年から3年に時効期間が伸びたので、単純計算で1.5倍になります。

ここ最近の私の残業代案件でも、労働者1人当たりの請求額が1000万円を超えることも珍しくなくなりました。

② 残業代請求で「負ける」とどうなるのか

ここでは、残業代の紛争が交渉などで解決にならず、最終的に「判決」まで至った場合にどうなるかを解説しました。

会社が、残業代の敗訴判決を貰うと、未払残業代の元金に加え、元金と同額の付加金と、支払いが完了するまでの遅延損害金を支払う必要があります。

「付加金」は、労働基準法違反に対するペナルティとして課されるものです。残業代で敗訴した大半の事案で、残業代の元金と同額の支払が命じられています。

「遅延損害金」は、退職前と退職後で利率が異なりますが、退職後は年14.6%とかなり利率が高いです。

この「付加金」と「遅延損害金」が重なると、結局会社には、残業代元金の2倍以上の金額の支払いが、判決で命じられることとなります。

残業代請求を争う会社側としても、これらのリスクを念頭に置きながら、和解をするか、判決まで戦うかを慎重に検討する必要があります。

③ 「負ける」残業代とは

未払残業代は、基本的には以下の計算式により求められます。

「賃金単価×時間外労働時間×割増率-既払残業代」

このうち、割増率を間違って計算している会社は多くないですが、割増率以外の要素である、賃金単価・時間外労働時間・既払残業代は、それぞれ典型的な落とし穴があります。

特に運送業の残業代案件では、時間外労働時間における「休憩時間」と「待機時間」がよく争いになります。既払残業代の有効性や、歩合給に関する紛争も多く、近年でも運送会社側に厳しい最高裁判決も複数件出ているので、注意が必要です。

④ 会社は結局何をすれば良いのか

未払残業代対策の第一歩は、自社の給与体系や労働実態の把握です。
給与体系を構築してから長い年月が経っていると、会社の賃金規程などと実際の賃金の支給実態が大きく乖離していることもあります。

また、専門家に給与体系の作成を一任しており、正確な内容を把握していないケースも良く見ます。

その上で、法律上問題がある場合には、給与体系の変更も含めて検討する必要がありますが、給与体系の変更には、それ固有の法的問題が沢山あります。単に制度を変更すれば良いわけではありません。

一度変更した制度を再度変更することが難しい点も踏まえると、給与体系を変更する際には、必ず弁護士などの専門家に相談しながら、慎重に進めていく必要があります。

おわりに

よつば総合法律事務所では、今回のトラック協会様の研修をはじめ、運送会社や一般企業向けの研修講師を多く担当しております。
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またよつば総合法律事務所では、多くの運送会社様より顧問契約をご依頼いただいており、残業代対策から行政対応まで、幅広く運送会社様をサポートすることが可能です。
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参加者の声

  • うちも他人事ではないと思いました。
  • 今日聞いた内容を踏まえて、一度自社の給与体系に問題がないかを検証します。
  • とても勉強になりました。ありがとうございました。

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