千葉県社会保険労務士会東葛支部の7月例会後の研修において、同じ勉強会に所属している社会保険労務士の先生及び外部の協力企業様と一緒にストレスチェックと実務に関わる研修の講師を担当しました。
弁護士三井伸容は少しストレスチェックと絡めながら、従業員のメンタルヘルスの問題に関わる安全配慮義務と関連する個人情報保護(プライバシー、個人情報保護法等)の問題を解説しました。
1 なぜ安全配慮義務と個人情報保護が関連するのか?
- 労働事件数の増加
- 安全配慮義務の概要
- 会社としてメンタルヘルスに関する健康情報を取得する機会が増加
- 個人情報保護法の改正
2 安全配慮義務の概要
- 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする(労働契約法第5条 )。
- 裁判例で述べられた具体的な安全配慮義務の内容のご紹介
3 ストレスチェックと安全配慮義務について
- 事業者が行う受検勧奨について、安全配慮義務の観点からどのくらいの頻度・程度で受検勧奨するのが妥当かの解説
- 労働者がストレスチェック結果の提供に同意せず、面接指導の申出もしないために、企業側が労働者のストレスの状態やメンタルヘルス上の問題を把握できず、適切な就業上の配慮を行えず、その結果、労働者がメンタルヘルス不調を発症した場合の企業の安全配慮義務についてはどのように考えればよいかの解説
4 メンタルヘルスに関する個人情報と法律上の扱い(裁判例、改正個人情報保護法)
5 メンタルヘルスに関する個人情報取扱上の主な注意点(取得、第三者提供、管理等)
6 漏洩とその責任の裁判例等のご紹介
(1)東京都HIV感染者解雇事件(東京地方裁判所平成7年3月30日判決)
→派遣先会社の健康診断でHIV感染が発覚した従業員の情報を派遣元会社に告知したこと及びこの感染を理由とする解雇が違法で不法行為を構成するとした事例です。
(2)社会福祉法人天神会事件(福岡高等裁判所平成27年1月29日判決)
→本人の同意を得ないまま利用目的を超え、HIV感染の検査結果を職員間で共有した行為について、個人情報保護法に違反するものであり、特段の事情のない限り、プライバシー侵害の不法行為が成立するとした事例です。
(3)看護師が患者の病状等を漏洩したことについて病院の責任が認められた事案(福岡高等裁判所平成24年7月12日判決)
→入院患者A(原告Xの子)の病状や余命等を、看護師Bが夫Cに家で話したところ、CがXに話してしまったことが問題になった事案です。
漏えいが使用者の事業の執行について行われたものであり、使用者が看護師Bの選任及び事業の監督について相当の注意をしたとは認められないなどとして、使用者責任を認めました。