消費生活相談員の皆様に向けて、千葉県弁護士会の消費者問題委員会に所属している弁護士らで、具体的な事例に即して解説をする消費生活相談実例研修を開催しました。
具体的には、次のような内容です。
- 具体的な事例を元にした消費生活相談実例研修
- 消滅時効
研修会を開催した背景と目的
消費生活相談員は、地方公共団体が設置する消費生活センター等の消費生活相談窓口で、困っている皆さんの暮らしを守るために日々活躍しています。皆様とてもよく勉強していて、知識も豊富です。
ただ、消費者被害はあまりにも多様です。
そのため、千葉県弁護士会の消費者問題委員会に所属している弁護士らで、現場の消費生活相談員が困っている具体的な事例を検討して解説をする研修を、毎年複数回、各自治体で開催しています。
研修の内容
1. 具体的な事例を元にした消費生活相談実例研修
次のような個別の事案を題材として、消費生活相談の実例に基づく検討を行いました。
① 古い借金だったので消滅時効の援用をしようと思ったら、消滅時効になっていなかった事例
② 本来必要のない工事を契約させられ、高額な工事代金を請求された事例
③ 害獣駆除業者に依頼したところ、契約金額が相場からかけ離れた金額であることが後から判明した事例
2. 消滅時効の援用
① 突然届く督促状
「大昔に消費者金融から借金をして返していない…」
「10年以上前に銀行から借金をして返済ができなかった。保証会社が出てきた記憶がある…」
「どの位昔かはっきり覚えていないが借金をした。今よく分からない名前の債権回収業者が出てきた…」
突然、消費者金融、クレジットカード会社、債権回収業者、法律事務所から督促状が届くことがあります。中には「法的措置移行」と言った、かなり強い表現のものもあります。
② 消滅時効とは
消滅時効とは、消費者金融、クレジットカード会社などの債権者が、一定の期間、権利を行使しない場合にその権利を消滅させるしくみのことを言います。
消滅時効が完成するまでの期間は、令和2年4月1日以降に発生した債権については、原則5年です。
③ 消滅時効の援用とは
「一定の期間、権利を行使しない場合にその権利を消滅させるしくみ」が消滅時効です。
もっとも、期間が経過するだけでは、権利は自動的には消滅しません。
権利を消滅させるためには、消滅時効の援用を行い、時効なので返済しないという点を債権者に伝えることが必要です。
④ 時効の更新とは
消滅時効が完成していない段階で一定の出来事があると、時効の更新となります。時効の更新になると、消滅時効完成までの期間が延長となります。
時効の更新となるのは次のようなときです。
- 貸主が裁判を起こしてきたとき
- 借入金の一部を返済したとき
- 「返済しますのでもう少し待ってください」と伝えたとき
⑤ 消滅時効完成後の債務の承認とは
権利が消滅時効により消滅しうるにもかかわらず、消滅時効が完成したことを知らないまま、借入金の一部を返済してしまったり、「返済しますのでもう少し待ってください」と伝えたりすることを、時効完成後の債務の承認といいます。
時効完成後の債務の承認をした場合、消滅時効の援用が認められなくなることがあります。