事業承継をテーマに、一般的な知識と、具体的な進め方や注意点をご紹介いたしました。
講師は、飲食事業の法的支援に注力し、自身も親族内で事業承継を経験している弁護士松本達也と、相続分野に注力し、事業承継の研究も行う弁護士杉山賢伸が担当いたしました。
当日は、多くの企業の皆様にご参加いただき、良い反響をいただきました。
ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
セミナーを開催した背景と目的
事業承継とは、会社の経営権を次の世代に引き継ぐことです。
経営権とは、端的には現経営者が保有する株式です。
つまり、事業承継とは、現経営者が保有する株式を次の経営者に引き継ぐことをいいます。
実は、中小企業の経営者の過半数は60歳以上で、引退・世代交代を考える時期になっています。
しかし、そのうちの30%は後継者が不在といわれております。
このまま廃業となってしまうと、従業員の雇用にも影響が及ぶだけでなく、企業が蓄積した技術も失われてしまいかねません。
雇用や技術の担い手である中小企業を維持・発展させるために事業承継は重要な問題となります。
とはいえ、そもそも事業承継とは何なのか、何に気を付けたらよいのか、わからないことばかりだと思います。
そこで、事業承継の基本となる知識・考え方・注意点をご案内することで、事業承継を考える皆様に指針を示したいと思い、本セミナーを開催しました。
セミナーの内容
承継させる相手
事業承継には大きく分けて次の3パターンがあり、それぞれメリット・デメリットがあります。
① 親族への承継
② 社内の役員・従業員への承継
③ 社外の第三者への承継(M&A)
① 親族への承継のメリット・デメリット
親族への承継のメリットは次のような点です。
- 身近な存在である親族の後継者に対しては、段階的に経営者としての教育を与えやすい。
- 債務保証に関して金融機関から理解を得やすい。
- 株式を後継者へ移転して所有と経営の分離を防ぐことで、後継者が経営に専念しやすい。
他方、親族への承継のデメリットは次のような点です。
- 自社株式を後継者に移転した場合に遺留分の問題が生じるおそれがある。
- 後継者以外の相続人への心情的な配慮を含め、種々の手当が必要となる。
- 親族ということで後継者への適格性の判断が甘くなりやすい。
② 社内の役員・従業員への承継のメリット・デメリット
社内の役員・従業員への承継のメリットは次のような点です。
- 社内で長期間勤務している従業員に承継する場合は、経営の一体性を保ちやすい。
他方、社内の役員・従業員への承継のデメリットは次のような点です。
- 社内に適任者がいないおそれがある。
- 後継者候補側は、元々後継者になるつもりで入社していない。
③ 社外の第三者への承継(M&A)のメリット・デメリット
社外の第三者への承継(M&A)のメリットは次のような点です。
- 最も広い範囲で優秀な後継者を選定することができる。
- 現経営者が自社株式を第三者へ売却する場合、株式の売却代金を得ることができる。
- 他企業との融合により、企業としての価値が高まる可能性がある。
社外の第三者への承継(M&A)のデメリットは次のような点です。
- 売却先の条件面でお互いに納得するのに時間を要する。
- M&Aの仲介業者への報酬の支払いが必要となる。
よくある成功・失敗の分かれ道
具体的な過去の失敗事例を元にして、失敗しないポイントを解説しました。
具体的には、次のような事例を解説しました。
① 遺言があったにもかかわらず、泥沼の紛争になった事例
② 元従業員の名義の株式(名義株)が残っていて、株式の帰属に争いが生じた事例
③ 一部株主と連絡が取れないため、全株式の譲渡(M&A)ができない事例
会社を磨き上げるステップ
事業承継を成功させるためには、承継したいと思えるような会社にすることが大切です。
そこで、承継したいと思える会社に磨き上げるための次のようなポイントを解説しました。
① 株式の権利関係の整理
② 財務状況の健全化
③ 未払残業代の清算などの人事労務の整備
④ 取引先との関係の維持・清算
⑤ 事業所内の美化(特にM&Aの場合)
経営者が明日から取り組むべきステップ
経営者が明日から取り組むべきステップは次のとおりです。
① ステップ1:家族・後継者への「意思確認」
親族や社内に受け継ぐ意思のある者がいるかきちんと確認しましょう。
もし後継者候補がいない場合には、M&Aに切り替えていきましょう。
② ステップ2:譲れない条件の優先順位を決める
M&Aなどの場合には、交渉により譲歩が必要になることもあります。
雇用を維持するのか、株式の価格に重点を置くのかなど、優先順位を決めます。
③ ステップ3:決算書3年分をもって専門家に相談する
財務状況のわかる専門家に決算書を見てもらい、会社の健康診断をしましょう。
④ ステップ4:弁護士に相談する
気になる事項がある場合、弁護士に相談して、スムーズな事業承継のための戦略を立てましょう。特に、株式の帰属についての問題、遺留分についての問題などがある場合は弁護士に相談しましょう。