税理士事務所における法的留意点

開催日時:
2025年09月12日 13:00 〜 16:00
セミナー分類:
企業法務
主催:
千葉県税理士会柏支部
講師:
小林 義和 小林 義和のプロフィール
対象者:
千葉県税理士会柏支部の税理士会員

税理士事務所における法的留意点

セミナー報告

士業事務所経営において直面するさまざまな法律問題について、事例を交えながら具体的な対策を解説しました。

具体的には、次のようなテーマを中心に解説しました。
1. 委任契約書等によるリスクヘッジ 
2. 守秘義務
3. 職員
① 顧客奪取行為
② 問題社員と退職勧奨
4. 関与先
① カスハラ
② 税理士の善管注意義務
③ 株主総会議事録
④ 破産手続き
⑤ 相続関係
⑥ 横領

セミナーを開催した背景と目的

士業事務所は、専門性の高い業務を遂行する一方で、一般企業と同様にさまざまな法律リスクがあります。特に、近年はコンプライアンス意識の高まりから、ハラスメント、情報漏洩、労働問題など、さまざまなリスクへの対応が求められています。

しかし、多忙な業務の合間にこうしたリスクについて体系的に学ぶ機会は少ないのが現状です。

そこで、本セミナーでは、士業事務所の皆様が日々の業務において遭遇しうる法的トラブルを未然に防ぎ、安心して経営に専念できるよう、実務に即した法的知識と具体的なリスクヘッジの方法を解説しました。

セミナーの内容

1. 委任契約書等によるリスクヘッジ

士業事務所の業務は、お客様との信頼関係に基づいて成り立っていますが、その関係を明確にし、トラブルを未然に防ぐためには、委任契約書の整備等によるリスクヘッジが不可欠です。

そこで、次のような点を解説しました。
① 委任の範囲を特定する方法
② 税務上の否認リスク等の説明方法
③ 報酬の定め方
④ お客様とのコミュニケーションにおける注意点
⑤ トラブルが発生した際の対応方法

2. 守秘義務

士業には、業務上知り得た依頼者の情報を厳格に守る守秘義務が課せられています。

そこで、具体的な事例を紹介しながら守秘義務の重要性を再確認するとともに、守秘義務違反を防ぐための具体的な対策を解説しました。

3. 職員

士業事務所の経営において、職員との関係は非常に重要です。そこで、職員との間に起こりうるさまざまな法的トラブルとその対策を解説しました。

① 顧客奪取行為
退職した従業員が顧客情報を不正に持ち出し、事務所の顧客を奪うことは、事務所経営に甚大な被害をもたらします。

そこで、退職後の顧客奪取を防ぐ対策として、就業規則に競業避止義務を定めることや、秘密保持に関する誓約書を締結することが考えられます。ただし、特に競業避止義務の有効性は、制限される期間や範囲の合理性、代償措置の有無などから厳格に判断されるため、専門家への相談をおすすめします。

② 問題職員と退職勧奨
他の職員とトラブルを起こしたり、業務意欲が低かったりするなど、問題のある社員への対応は、多くの事務所が抱える課題です。

そこで、問題職員への具体的な対応方法として、次のような内容を解説しました。

  • 指導・注意の記録の重要性
  • 退職勧奨の適切な進め方

4. 関与先

士業事務所は、お客様のさまざまな問題に深く関わります。そこで、お客様との間で起こりうるトラブル、特に士業事務所が巻き込まれる可能性のある問題を解説しました。

① カスハラ
近年増加している、依頼者による悪質なハラスメント、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対応は、事務所の従業員の安全を守るうえで重要です。

そこで、カスハラに対する具体的な対応方法として、次のような点を解説しました。

② 税理士の善管注意義務
税理士は、依頼を受けた税務申告業務などについて、その職業や社会的地位にある者として、一般的に期待される水準の注意を払って業務を行う義務を負います。法律上、善管注意義務といいます。

そこで、この善管注意義務の範囲と、違反した場合の税理士賠償責任について解説しました。

③ 株主総会議事録
株主総会議事録は、会社の重要な意思決定を記録したものであり、その作成・管理には細心の注意が必要です。

そこで、具体的に税務調査で問題となりうる株主総会議事録の内容をテーマに、議事録の記載事項や作成上の注意点、法的効力について解説しました。

④ 破産手続き
お客様の破産について、次のような内容を解説しました。

  • お客様が破産手続きをするためにかかる費用
  • お客様がしてはいけない行為
  • 税理士報酬の請求の可否や回収可能性
  • 破産手続きにおける事務所の法的地位

⑤ 相続関係
近年の高齢化社会の進展により、相続に関する関心が高まっています。税理士業務としても相続税申告は重要な業務となりつつあります。

そこで、相続関係のトラブルを未然に防ぐために、次のような点を解説しました。

  • 遺言書が存在する場合に遺言書と異なる遺産分割を行う際の、税務上・民法上・登記上の注意点
  • 遺留分

⑥ 横領
お客様の会社で従業員による横領が発覚した場合、たとえば、税理士が通常の業務範囲で容易に発見できたはずの異常を見過ごしたなど、専門家としての注意義務(善管注意義務)違反が認められるようなケースでは、責任を問われる可能性があります。

そこで、横領を防ぐための内部統制の重要性や、万が一横領が発生した際の対処法を解説しました。

参加者の声

  • 委任契約書の重要性が分かりました。作成していない件も結構あるので、作成したいと思います。
  • 最近、相続の相談が多い印象がありましたので勉強になりました。
  • 職員のことで悩んでいたので参考になりました。

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