相続の分野に興味を持つ異業種の方々が集まる勉強会で、弁護士の相続実務にまつわるお話をさせていただきました。12名の方々にご参加いただきました。
具体的には、弁護士以外の業種の方には分かりにくい「遺産分割調停・審判の実務」と、相続実務の基本ではありますが、複雑で混乱しやすい「相続の対象財産の種類に応じた法律関係」について解説しました。
具体的には、次のような内容です。
1. 遺産分割調停・審判の実務
① 調停の申立て
② 調停手続の流れ
③ 調停手続の終了
④ 審判手続
2. 相続の対象財産の種類に応じた法律関係
① 問題の所在
② 各財産の法律関係
セミナーを開催した背景と目的
相続の分野に興味を持つ異業種の方々が集まる勉強会で講師の依頼を受けました。
参加者には、税理士や司法書士など相続に関する基礎知識のある方が多くいらっしゃったので、相続の分野で基本的には弁護士しか関わらない分野をテーマにしようと思い、「遺産分割調停・審判」の実務について解説しました。
また、参加者の皆様の仕事に役立つテーマにしたいと思い、相続実務の基本ではありますが、複雑で混乱しやすい「相続の対象財産の種類に応じた法律関係」について解説しました。
セミナーの内容
1. 遺産分割調停・審判の実務
① 調停の申立て
遺産分割調停について、次のような点を解説しました。
- 各相続人は、調停・審判のいずれでも申立が可能です。もっとも、実務においては、調停手続になじまないことが明らかな場合を除き、審判を申し立てしても、裁判所は職権で調停に付しています。
- 裁判所の管轄は、相手方の住所地または当事者が合意で定める家庭裁判所となります。
② 調停手続の流れ
調停手続きの流れについて、次のような点を解説しました。
- 裁判所への呼び出しの方法は、呼出状を裁判所が郵送する方法で行います。
- 当事者同士が顔を合わせなくてもいいように配慮されています。
- 調停は非公開で進みます。
- 期日は概ね1ケ月に1度くらいの割合で設けられ、1回につき2~3時間くらい行われることが多いです。2回目以降は当事者の都合を聞いて次回期日が定められます。
- 当事者が遠隔地に居住しているときその他相当と認めるときは、電話会議システムの利用ができるときがあります。
③ 調停手続の終了
調停手続きの終了について、次のような点を解説しました。
- 調停が成立すると、調停条項は確定した審判と同一の効力を有します。金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の具体的給付義務を定めた調停調書の記載に基づく強制執行もできます。
- 調停が不成立となって調停手続が終了した場合には、調停申立のときに遺産分割の審判の申立があったものとみなされます。したがって、改めて審判申立書を提出する必要はありません。
④ 審判手続
審判手続について、次のような点を解説しました。
- 金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判に基づく強制執行もできます。
- 遺産分割審判に不服があるときは、2週間以内に即時抗告を申し立てることができます。逆にいうと、即時抗告以外の方法による不服申立ては認められません。
2. 相続の対象財産の種類に応じた法律関係
① 問題の所在
被相続人が相続開始時に有していた財産的権利義務は、被相続人の一身に専属するものを除いてすべて相続の対象となり、相続の開始により相続人に承継されます。
しかし、相続の対象となる遺産がすべて遺産分割の対象となるわけではなく、遺産の種類に応じて扱いが異なります。
② 各財産の法律関係
次のような各財産について、法律関係がどのようになるかを解説しました。税務と法務が異なる部分もありますので注意が必要です。
- 不動産
- 不動産賃借権
- 賃貸建物の賃料債権
- 預貯金債権
- 現金
- 損害賠償請求権
- 株式
- 金銭債務