より良い就業規則にするために

Vol.183
2024年08月号

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目次
「法律記事『より良い就業規則にするために』」
「法律記事『【旅館業法改正】カスタマーハラスメント対策』」
「大阪事務所のご紹介(令和6年6月開設)」
「ワインが苦手な人のためのワインの選び方」
「2024年4月~6月 セミナー報告」

より良い就業規則にするために

弁護士として就業規則を確認する際に、気になることが多い条項がいくつかあります。
好みのレベルの話も一部あるかと思いますが、いくつかピックアップしてみました。
千葉事務所弁護士米井舜一郎

1 『試用期間』について

〈よく見受けられる規定〉

試用期間の延長規定がない。

〈変更案〉

「新たに採用した者については、採用した日から3か月間を試用期間とする。
ただし、会社が必要と認めたときは、3か月間を限度として試用期間を延長することができる。」

「試用期間が終わりそうだけど、本採用して良いか判断できない」という場面で、試用期間の延長を検討する場面があります。
仮に雇用契約書上に、「試用期間を延長することがある」という記載があったとしても、就業規則に定めがなければ、試用期間を延長できない可能性があります。念のため就業規則にも、試用期間を延長することがある旨、明記しておくことをお勧めしています。

2 『休職期間』について

〈よく見受けられる規定〉

「私傷病による休職期間は1か月とする。」

〈変更案〉

「私傷病による休職期間は3か月とする。」

休職期間は短ければ良いというものではありません。労務管理のしやすさ、という目線からすると、3か月程度休職期間があった方が、傷病の推移や治療状況、本人の休職期間中の態度を観察することができ、復職の判断がしやすいです。また、復職の検討でバタバタすることもなくなります。1か月という期間が必ずしも短すぎるというわけではありませんが、「3か月程度期間を設定した方が、労務管理がしやすい」、というアドバイスをよくします。

3 『再度休職する場合の休職期間』について

〈よく見受けられる規定〉

休職を繰り返す従業員の休職期間の制限規定がない。

〈変更案〉

「私傷病休職後に復職した社員について、復職後1年以内に同一又は類似傷病を発症したと事業者が判断した場合、または欠勤を繰り返すなどして勤務に堪えないと事業者が判断した場合、事業者は当該社員に対し、復職を取り消し、直ちに休職させることができる。なお、この場合における休職期間は、復職前の休職期間の残日数(ただし、残日数が30日に満たないときは30日)とする。」

例えば、今年の2月から私傷病(うつ病)で3か月間休職し、5月から復職した従業員がいたとします。この従業員が8月に再度うつ病となり、会社に出社できなくなった場合に、改めて休職を命じる必要があるのでしょうか。

このような場面で、仮に上記のような休職期間の通算規定があれば、改めて始めから休職を命じる必要はありません。私傷病による休職が短期間で繰り返され、その度に休職期間がリセットされることを防止するために、休職期間通算規定は設けた方が良いでしょう。

4 自然退職の定め

〈よく見受けられる規定〉

「従業員が30日間行方不明となったときは、自然退職とする。」

〈変更案〉

「社員と連絡がつかない状況が30日間継続したときは、自然退職とする。」

何をもって「行方不明」と判断するかが不明確であるため、「行方不明」という表現は控えた方が良いと考えています。従業員と連絡がつかないけれど、居場所は分かっている、という場合は、「行方不明」にあたらないと判断されてしまうでしょう。

そのため、「従業員と一定期間連絡がつかない」ことを、自然退職事由と設定するのが良いと考えます。

なお、自然退職処理でトラブルになるケースも多くあるため、規定の内容に関わらず、退職処理をする前に専門家(弁護士・社会保険労務士)に相談することをお勧めします。

5 懲戒委員会(懲罰委員会)の定め

〈よく見受けられる規定〉

懲戒委員会の定めがある。

〈変更案〉

懲戒委員会の手続などを定めない。

就業規則上、「懲戒処分については懲戒委員会で審議する」との規定があると、処分に先立ち、必ず懲戒委員会を開催する必要があります。懲戒委員会を開催せずに懲戒処分を行った場合、それだけで、懲戒処分が無効と判断される可能性があります。

懲戒委員会の開催は会社にとって負担となる上、委員会を開催する時間的余裕がないケースもあるため、特に拘りがないようでしたら、あえて懲戒委員会の定めは置かない方が良いかと思います。

(文責 弁護士 米井 舜一郎


【旅館業法改正】カスタマーハラスメント対策

1 旅館業法について

街中にインバウンドの旅行客が非常に多くみられるようになりました。宿泊業の方は平時の状況を取り戻すため尽力されていることと思います。また、これから旅行や宿泊を計画されている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
宿泊業に関し、旅館業法と近時の改正について触れたいと思います。
千葉事務所弁護士堀内良

2 旅館業法の特徴-「契約締結の自由」の制限

「旅館業法」は1948年に制定された歴史ある法律です。
勿論、「旅館」のみならず、ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業を広く対象としています。

一種の公益的職務とされ、伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるなどの宿泊拒否事由に該当する場合を除き、宿泊を拒んではならないとされています。
「契約締結の自由」が制限されているのが特徴です。

3 「迷惑客」の宿泊拒否が可能に

近年、いわゆる「迷惑客」からの対応困難な要求が繰り返され、業務に支障が生じている実態が指摘されていました。

2023年12月13日に改正旅館業法が施行され、新たに宿泊拒否事由が追加されました。

これにより、カスタマーハラスメントに当たる特定の要求を行った者の宿泊を拒むことができることになっています。

具体例として次のような場合が挙げられています。

<新たな拒否事由に該当する例>
宿泊しようとする者が従業員に対し、以下のような行為を繰り返す場合
① 不当な割引、契約にない送迎等、過剰なサービスの要求
② 対面や電話等により、長時間にわたり、不当な要求を行う行為
③ 要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が不相当なもの(身体的な攻撃、精神的な攻撃、土下座の要求等)

4 さいごに

今後も事業者、宿泊者ともに対応に困る場面があるかもしれません。
地方自治体などに相談窓口が設けられています。悩みすぎず、このような相談窓口等も活用していただければと思います。

*地方自治体の相談窓口一覧(厚生労働省のウェブサイト)

よつば総合法律事務所では、カスタマーハラスメントに関するサポートも実施しています。
顧客対応でお悩みの企業様やカスタマーハラスメント対策をご検討されている企業様はお気軽にご相談ください。

*関連情報

カスハラには「対応いたしません」。JR東日本が発表した「方針」とは

(文責 弁護士 堀内 良


よつば総合法律事務所 大阪事務所のご紹介

大阪事務所所長の辻悠祐です。
今回は令和6年5月に開設した大阪事務所のご紹介を少しだけさせていただきます。

1.そもそも大阪ってどんなところ?

大阪は、東京から新幹線で2時間30分ほどの距離にあります。
新幹線以外にも、関西国際空港、大阪国際空港(伊丹空港)があり、国内外へのアクセスも大変便利です。
市内の公共交通機関も発達しており、観光もしやすいです。

ユニバーサルスタジオジャパンや大阪城公園、道頓堀など有名な観光地がたくさんあるので訪れたことがある方も多いと思います。
たこ焼き、お好み焼き、串カツなどグルメも充実しています。

2.大阪事務所の場所

大阪事務所は、大阪梅田ツインタワーズ・サウス15階です。JR大阪駅直結、阪神「大阪梅田」駅徒歩1分の場所にあります。2022年3月に全面開業したばかりの新しいビルになります。

低層階は、阪神百貨店梅田本店となっているので、阪神百貨店梅田本店を目印にして探していただくと分かりやすいです。
事務所があるフロアにはビジネスラウンジがあり、ドリンクの提供もできますので大阪にお越しの方はぜひお気軽にお立ち寄りください。建物内には飲食店も充実しており、お好み焼きもすぐに食べられます!

3.大阪事務所の取扱業務

大阪事務所では、企業法務、誹謗中傷の対応を中心に、これまで柏事務所でも取り扱ってきた相続・不動産・交通事故の案件も取り扱う予定です。業務のオンライン化を進めるため、Zoom等でのご相談も承っておりますので、お気軽にお申し付けください。

4.お客様へ

大阪事務所に異動をしても、これまで同様に業務を行わせていただきます。オンラインミーティング、チャットワーク、LINE、メールなどのツールを使って、スピード感を持って対応させていただきます。

千葉・東京・名古屋・大阪に拠点があることで、全国対応も可能です。お客様の期待を越えられるように、より一層業務に邁進して参りたいと思います。
以上、大阪事務所設立及び異動のご報告とさせていただきます。
今後ともよろしくお願いいたします。

(文責 弁護士 辻 悠祐


~第86回 現在3週間禁酒中です!~

過去のコラムは当事務所サイトのニュースレターバックナンバーをご覧ください。
当事務所ニューレターバックナンバー

現在(7月11日)、3週間禁酒中です。

毎年、7月から8月は多忙になることが多いです。夏季休業の前後に裁判が集中したり、新人弁護士の就職説明会や採用活動があったりするためです。
しかも、今年2024年は、船橋事務所、大阪事務所、名古屋事務所の3拠点を開設しました。
例年よりも多忙です。そのため、禁酒をして心身を整えています。
禁酒の効果ですが、私は次のような効果があります。

  • 体重が減って適正体重になる。
  • 頭がクリアになって、体調も良くなる。
    特に金曜日や土曜日にお酒を飲まないと土日の活動が充実する。
  • 前向きな気持ちになる。

とは言っても、やっぱり1週間頑張った後は1杯飲みたくなるものです。
このコラムでも何度かご紹介していますが、夏の暑いときはソーヴィニヨンブランの白ワインです。夏の夕方、冷やして飲むとワインが苦手な人でもワインが好きになるはずです。特に、縁側やベランダなど外で飲むと、よりおいしく感じます。
今年も暑い夏ですが、皆様元気に乗り切りましょう!

(文責 弁護士 大澤 一郎


2024年4月 ~ 6月 セミナー報告

2024年4月~6月に弁護士が講師を務めたセミナーの一部をご紹介いたします。
今後も順次開催予定です。ご興味あるテーマがありましたらご参加お待ちしております。

4月2日(火)開催

「労務問題についての留意事項」

講師:小林 義和

4月10日(水)開催

外国人材受入れHow toセミナー

講師:三井 伸容

4月22日(月)開催

ボランティア活動と法的責任

講師:小林 義和

6月4日(火)開催

ボランティア活動と法的責任

講師:小林 義和

6月12日(水)開催

外国人材受入れHow toセミナー

講師:三井 伸容

セミナー情報は、よつば総合法律事務所公式HPにて随時お知らせしています。
終了したセミナーの報告もお伝えしておりますので、よつば公式HPもぜひご覧ください。


【夏季休業のお知らせ】
当事務所は8月13日~8月16日まで夏季休業となります。
何卒ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。