安衛法改正で実務はこう変わる!~安衛法改正内容とそれに伴うリスクの解説~

開催日時:
2019年06月22日
セミナー分類:
企業法務
主催:
千葉県社会保険労務士会東葛支部
講師:
三井 伸容 三井 伸容のプロフィール
社会保険労務士の先生
開催会場:
松戸商工会議所別館
対象者:
社会保険労務士の先生方

安衛法改正で実務はこう変わる!~安衛法改正内容とそれに伴うリスクの解説~

セミナー報告

社会保険労務士の先生方向けに労働安全衛生法の改正に関する研修講師を担当しました。弁護士三井の担当は以下のとおりです。

1 労働安全衛生法(及び同規則)の改正内容と実務上の注意点
(1)産業医・産業保健機能の強化
①産業医の活動環境の整備
・産業医の独立性・中立性強化、辞任時・解任時の衛生委員会への報告等
・産業医の権限の具体化、健康管理に必要な情報の提供、産業医の勧告内容の記録・保存等

②健康相談の体制整備、健康情報の適正な取り扱い
労働者からの健康相談への適切な対応に必要な体制の整備、労働者の心身の状態に関する情報の取り扱い等

(2)長時間労働者に対する面接指導等の強化
①労働時間の状況の把握
②労働者への労働時間に関する情報の通知
③医師による面接指導の対象となる労働者の要件
④研究開発業務従事者・高プロに対する医師による面接指導
⑤改正安衛法により面接指導を行う労働者以外の労働者に対する必要な措置
2 改正に伴うリスクの予測・解説
①産業医、事業者、労働者との関係に変化が生じる可能性
②記録・保存義務が紛争発生時に与える影響
③健康相談の体制整備、健康情報の適切な取り扱いの義務化からどのような紛争の発生が予想されるか
④労働時間の状況の把握義務が明確化されたことにより、実務にどのような影響があるか。どのような紛争の発生が予想されるか。
⑤通知制度により、労働者側が長時間労働に気づく契機が増加 等

本セミナーに関連する質問と回答

Q 「労働時間の状況」として、事業者は何を把握すればよいのでしょうか?
A 労働基準法上の労働時間の把握のように「労働日ごとの始業・終業時刻」ではなく、「労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等」の把握で足ります。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について(厚生労働省)も併せてご参照下さい。

Q 面接指導の要否は、休憩時間を除き1週間当たり40 時間を超えて労働させた時間(時間外・休日労働時間)により判断することとされています。会社の事情により、休憩時間を含めて労働時間の状況を把握する方法を採用した場合には当該時間をもって面接指導の要否を判断してもよいのでしょうか?
A 原則として、休憩時間を除いた時間を基準に判断することとなります。事情により、休憩時間等を除くことができず、それを含めた時間により労働時間の状況を把握した労働者については、当該時間をもって判断することも可能です。

関連情報

Q 「労働者への労働時間に関する情報の通知」とは、どのようなことをすればよいのでしょうか?
A 事業者は、1月当たり時間外・休日労働時間が80時間を超えた労働者本人に対して、速やかに当該超えた時間に関する情報を通知しなければなりません。高度プロフェッショナル制度の対象労働者を除き、管理監督者、事業場外労働のみなし労働時間制の適用者を含めた全ての労働者が対象となります。
 
また、研究開発業務従事者については、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超えたものに対して、申出なしに面接指導を行わなければいけません。対象労働者に対し、労働時間に関する情報を面接指導の案内と併せて通知する必要があります。
Q 「労働者への労働時間に関する情報の通知」はどのような方法で行えばよいのでしょうか?
A 書面や電子メール等により通知する方法が適当です。給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって労働時間に関する情報の通知としても差し支えありません。
なお、時期としては算定後、速やかに通知する必要があります。
Q 労働時間の状況の把握において、自己申告で行うことは可能でしょうか?
A 自己申告は「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」における例外的な方法です。「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては以下のような例があります。ハードルは高いといえます。

例:労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合
※事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは認められない。
※タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録、パーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは認められない。

自己申告で行う場合には、労働者への説明、自己申告が実態に合っているかの実態調査・補正、適正な申告を阻害するような施策をしないことなど、必要な対応事項があります。対応事項は多岐にわたりますので、詳しい内容は下記通達をご確認ください。

参考リンク