実務に役立つ!事例で考える労働トラブル予防・解決のポイント

開催日時:
2018年12月15日
セミナー分類:
企業法務
主催:
社会保険労務士の先生方の自主研究会
講師:
三井 伸容 三井 伸容のプロフィール

実務に役立つ!事例で考える労働トラブル予防・解決のポイント

セミナー報告

内容

人事労務の分野でのトラブル対応方法をお話しました。最近のニュースや労働判例も取り扱いました。社会保険労務士の先生方向けですので、会社側の立場でのお話になります。概要は以下のとおりです。

1. 総論
(1) はじめに(証拠と交渉の重要性について)
① 労働トラブルの解決にとって必要なのは交渉の技術なのか、証拠なのか?
② 証拠の重要性
③ 交渉での重要な視点
(2) 交渉過程で作成する書面について作成上の注意点
① 会社として提出した文書が今後の弁護士同士の交渉、裁判で証拠として扱われる
② 支払義務を認めるか否か、認める場合の金額にそれぞれ注意
③ 事実関係を認めるような表現に注意
④ 事実と反するような記載をしていないか注意
(3) その他交渉上で注意するべきポイント
① 会社の将来とって良い解決が何なのかを常に考える
(4) 裁判所に評価されやすい証拠のポイント
① 客観的な記録か否か
② 自ら不利な内容を認めるか否か
2.各論
(1) 解雇トラブルの近時の傾向と対策のポイント
① 問題行動・能力不足解雇と日常的な注意指導
② 解雇のつもりがない発言を「解雇された」と主張されるケース
③ 解雇トラブルと解決金の目安
(2) 長時間労働・残業代未払トラブルの近時の傾向と対策のポイント
① 長時間労働は残業代の問題だけではない(過労死と安全配慮義務違反、レピュテーションリスク、採用への影響等)
② 会社のみならず、社長や管理職の個人責任が問われるリスク
③ 表面的にとどまる長時間労働対策とその弊害(持ち帰り残業、管理職へのしわ寄せ等)
④ 労働時間の問題における会社側の立場での主張・立証のポイント
⑤ 交渉時の注意点
(3) ハラスメント問題の近時の傾向及び対策のポイント
① 最近のセクハラ・パワハラトラブルの傾向
② ハラスメント研修の効果
(4) メンタルヘルス疾患事案での対応のポイント
① 単なる「勤務態度不良」なのか、メンタルヘルスの問題なのか
(5) 労災での近時の傾向及び対応のポイント
① 労災隠しの危険性
② 事故状況の証拠化の重要性
③ 被害者及びその家族対応での注意点
(6) 懲戒処分の対応のポイント
① 非違行為の調査のポイント
② 調査時の事実確認のポイント
③ 手続はルールどおりに厳格に
④ 退職勧奨を行う場合の注意点(例:「断ったら懲戒解雇になる」といった発言)
(7) まとめ

本研修に関連する質問と回答

Q 問題行動・能力不足の従業員への対応として「注意指導が必要」と聞きました。具体的にはどのように行えばよいですか?
A ケースにもよりますが、次のような点に注意しましょう。
①具体的にどのような事実が問題になっているのかを明確にすること

②可能な限り、事実を事後的に検証可能な形で記録にすること。特に、顧客からのクレームなど、会社以外の第三者から問題として指摘されている証拠がないか、問題を具体的な数値としてわかりやすく示すことができないか等を検討すること。

③問題となる事実だけではなく、それに対して会社が指導したこと、指導内容、それに対する従業員の反応(事実に関する認識や指導に対する受け止め方、反省の有無等)もセットで記録化すること

④改善してほしいという気持ちを忘れないで注意指導すること。「解雇のための証拠づくり」という気持ちが強いまま対応してしまうと、客観的に見て不十分な指導内容になることがあります。

Q 人事労務トラブルが発生した場合、会社側で注意すべき点としてどのようなものがありますか?
A 解雇残業代労災など、トラブルの内容によっても大きく変わりますが、一般的な注意点は次の通りです。

①労働者側と会社側双方の強みと弱みを把握すること
事実関係、法的な見通しを正確に把握する必要があります。

また、当事者の現在の状況(例:従業員側の経済状況、再就職の有無、会社側の業務内容、経営状況等)も交渉に影響を及ぼすことがあります。可能な限り把握するとよいです。

②会社の将来にとって一番良い解決が何なのか考えること
人事労務トラブルが起きた場合、他の従業員もそのことを知っており、会社の対応を注視している場合は珍しくありません。

トラブルの相手方である従業員以外にも同じような働き方や労務管理をしている従業員がいると思います。そのため、目の前の従業員への対応を誤ると、他の従業員へ問題が波及することもあります。

トラブルが激化した結果、労働基準監督署や監督官庁などの行政への通報されたり、マスコミ、SNS等で取り上げられてしまうこともあります。

会社側の立場では、目の前の従業員との勝ち負けだけにこだわらず、上記のような視点で会社にとってベストな解決なのかを検討する必要があります。

参考リンク