消費生活相談員の皆様に向けて、千葉県弁護士会の消費者問題委員会に所属している弁護士らで、具体的な事例に即して解説をする消費生活相談実例研修を開催しました。
具体的には、次のような内容です。
- 具体的な事例を元にした消費生活相談実例研修
- カスタマーハラスメントについて

研修を開催した背景と目的
消費生活相談員は、地方公共団体が設置する消費生活センター等の消費生活相談窓口で、困っている皆さんの暮らしを守るために日々活躍しています。皆様とてもよく勉強していて、知識も豊富です。
ただ、消費者被害はあまりにも多様です。
そのため、千葉県弁護士会の消費者問題委員会に所属している弁護士らで、現場の消費生活相談員が困っている具体的な事例を検討して解説をする研修を、毎年複数回、各自治体で開催しています。
研修の内容
1. 具体的な事例を元にした消費生活相談実例研修
次のような個別の事案を題材として、消費生活相談の実例に基づく検討を行いました。
① 通販サイトの広告表示について
② ポイントサービス問い合わせ時の事業者対応について
③ レスキュー契約におけるクーリングオフについて
本セミナー報告では、「② ポイントサービス問い合わせ時の事業者対応について」で取り上げたカスタマーハラスメントについて報告します。
2. カスタマーハラスメントについて
(1) カスタマーハラスメント対策の法的義務化
従業員に対する理不尽な要求や暴言、土下座の強要といった悪質なクレーム、カスタマーハラスメントが社会問題となっています。
カスタマーハラスメントの問題に関する法律は整備されていませんでした。しかし、カスタマーハラスメントが深刻な社会問題と化したことから、2025年6月に労働施策総合推進法等の一部を改正する法律によって、事業主・労働者・顧客・国等の対応について規定されました。
その結果、事業主には雇用管理上の措置を講じる必要があることとなりました。具体的内容は、これから公開される指針の中で定められる予定です。カスハラに対する基本方針の策定、従業員への周知啓発、相談体制の整備、対応方法や手順の策定等が求められるのではないかと思います。
(2) カスタマーハラスメントの基準
そもそもどのような行為がカスタマーハラスメントに該当するのでしょうか。
改正労働施策総合推進法33条1項では、①顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、②社会通念上許容される範囲を超えた言動により、③労働者の就業環境が害されるもの
とされています。
厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアルでは、①顧客等からのクレーム・言動のうち、②当該クレーム・言動の要求の妥当性に照らして、③当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、④労働者の就業環境が害されるもの
とされています。
つまり、社会通念上許容されるかによって判断されることとなります。
ただし、カスタマーハラスメントの該当性にはグレーゾーンがあり、カスタマーハラスメント該当性に関する統一的な基準を作ることは難しいのが原状です。
(3) 具体的事例へのあてはめ
具体的な事例についてあてはめを行い、カスタマーハラスメントに該当するか否かについて解説を行いました。
