企業の経営者や人事労務担当者様を対象にした、職場の困った社員への対応セミナーを開催しました。
次のような9つの事例の対応を解説しました。
- 試用期間と本採用拒否
- 育休復帰者の待遇変更
- 情報漏えい~SNSと炎上リスク
- 従業員の競業
- 私傷病による休職
- 困った残業
- 従業員の不正取得(詐欺や横領)
- パート従業員の雇止め
- 復職(メンタルヘルス)
定員を超えるたくさんの皆様にご参加いただきました。
セミナーを開催した背景と目的
問題社員は会社に深刻な影響を与えます。対応を間違えるとますます大きなトラブルになってしまいます。
そこで、よくある問題社員の事例の解説を通じて日々の労務管理に活かしていただきたく、本セミナーを開催しました。
セミナーの内容
1. 試用期間と本採用拒否
勤怠不良や能力不足なことが発覚しました。本採用は拒否できますか?
正当な理由などがないと本採用の拒否は難しいことを解説しました。
2. 育休復帰者の待遇変更
副主任手当の支給がある理学療法士Aさんです。育休後に復帰したとき、本人の希望は負担の少ない業務への異動でした。役職を外すことはできますか?
本人の同意なしに役職を外すことは、無効となる可能性が極めて高いことを解説しました。
あわせて、本人の同意を得て役職を外すときも、無効となることがありえることを解説しました。
3. 情報漏えい~SNSと炎上リスク
お客様が来店した事実や顧客情報について、フェイスブックやツイッターなどのSNSに社員の誰かが投稿をしています。どのように対応したらよいでしょうか?
情報漏えいには次のような順番で臨むのが望ましいことを解説しました。
① 証拠の保全
② 発信者の特定
③ マスコミ対応
④ 発信者として特定した社員からの事情聴取
⑤ 社員への削除要請や削除の業務命令の検討
⑥ 社員への懲戒処分の検討
⑦ 社員への損害賠償請求や刑事告発の検討
4. 従業員の競業
数年前に雇ったYは、たくさん契約を取ってくる優秀な社員です。しかし、突然Yからライバル会社に転職したいと相談を受けました。このままYをやめさせてよいのでしょうか?
競業についてのトラブルを防止するため、次の方法を解説しました。
① 入社時に競業避止義務の誓約書を作成する方法
② 退職時に競業避止義務の誓約書を作成する方法
5. 私傷病による休職
40代の事務職Kさんです。最近調子が悪そうです。休んだり出社したりを繰り返しています。どうすればよいですか?
体調不良の社員について、次のような対応が望ましいことを解説しました。
① 社員本人との面談
② 医師への受診を促すこと
③ 残業禁止や所定労働時間の短縮などによる業務見直し
④ 休職命令の発令
⑤ 健康状態の継続的な確認
6. 困った残業
設備工事業A社では、現場管理職の男性陣の退社時間が遅いです。早く帰るように言ってもなかなか帰りません。どうすればよいですか?
困った残業を減らすため、次のような対策例を解説しました。
① 現場での新しいルールの作成
- 社長が毎週残業の上限目標を設定
- 残業を届出制ではなく許可制に変更
② 残業が少ない人を評価するなど新しい評価制度の作成
- 残業の上限を守れた社員を評価
- 残業の上限を守れた社員の処遇を向上
③ 残業削減プロジェクトチームを発足して、組織として個別に残業が増える要因を削減
- 時間管理のクラウドシステムの導入
- 人不足の時間はパートタイマーを別途雇用することを検討
7. 従業員の不正取得(詐欺や横領)
従業員が在庫を横領していることがわかりました。金額は100万円です。どうすればよいですか?
従業員の横領については、次のような対応が望ましいことを解説しました。
① 証拠をまずは確保
② 事実関係を従業員から聴取して、横領額を認める確認書を作成
③ 一括払いで返済を請求
④ 一括払が難しい場合は分割払いで請求(担保や連帯保証人を検討)
⑤ 解雇などの処分を検討
8. パート従業員の雇止め
態度に問題のあるパート従業員がいます。1年ごとの契約なので、次回の更新をお断りしようと思います。何も問題ないですよね?
パート従業員の雇止めは無効となることがあります。雇止めをするときは、専門家に事前に相談することが望ましいことなどを解説しました。
9. 復職(メンタルヘルス)
数か月前から休職中の社員の休職期間満了が近づいています。
就業規則では休職期間満了後は退職となっています。もっとも、体調が良くなったので復職したいとの申し出がありました。
いったいどのように対応したらよいでしょうか?
復職について、次のようなポイントを解説しました。
① 主治医の判断を鵜呑みにしないこと
② 社員の客観的な状況を把握しておくこと
③ 必要なときは、会社指定医への受診命令を検討すること
④ 必要なときは、産業医への相談を検討すること
⑤ 復職できる状態かどうかは、慎重に専門家に相談しながら検討すること