千葉県社会保険労務士会様からお声がけいただき、「法改正から最新の裁判例まで!ハラスメント対応の勘所」というテーマにて、研修講師を担当しました。
会場参加・オンライン参加を含め、多くの先生方にご参加いただき、また研修後もお知り合いの先生方から「研修見ました」とたくさんお声掛けをいただきました。ご参加いただいた先生方、ありがとうございました。
研修を開催した背景と目的
令和8年10月1日施行の改正労働施策総合推進法により、労働者保護の観点で、企業に対し、カスタマーハラスメント対策が義務付けられます。
そのため、法改正の内容や厚生労働省の指針の解説、カスタマーハラスメントに関する裁判例のご紹介と、そこから導かれる企業としての対策を解説しました。
また、社会保険労務士の先生方は、関与先の企業でハラスメント問題が発生した場合、真っ先に相談を受ける立場にあります。そこで、弁護士の視点から、ハラスメント対応について注意すべきポイントとその対策を解説しました。
研修の内容
1. (改正)労働施策総合推進法について
まず冒頭で、カスタマーハラスメントに関する改正労働施策総合推進法の内容と、事業主が講ずべき措置について、厚生労働省の指針も踏まえて解説しました。

2. カスタマーハラスメントに関する裁判例
「カスハラ」対策ができていない場合、企業に次のようなリスクが発生することを解説しました。
① 自社従業員のメンタル不調・退職、労災認定の可能性
② 自社従業員から法的責任を追及される可能性(安全配慮義務違反等)
③ 自社従業員が取引先等に対して行ったカスハラの法的責任を、使用者として追及される可能性
④ 企業価値の低下(SNSでの炎上等)

また、特に、「自社従業員から法的責任を追及される可能性」という観点から、実際に起きた裁判例のご紹介と解説をしました。
解説した裁判例は次の5つです。
① 東京地方裁判所平成25年2月19日判決
② 東京地方裁判所平成30年11月2日判決
③ 甲府地方裁判所平成30年11月13日判決
④ 長崎地方裁判所令和3年1月19日判決
⑤ 東京高等裁判所令和4年11月22日判決(横浜地方裁判所令和3年11月30日判決)
まだ「カスハラ」という概念が明確でなかった時代の裁判例から、ごく最近の裁判例まで幅広く取り扱いました。
また、企業として責任が認められた事例と責任が否定された事例をそれぞれ取り上げ、裁判所の判断のポイントや企業として参考にすべき点をご説明しました。
たとえば、東京地方裁判所平成25年2月19日判決の裁判例は次のとおりです。


この裁判例では、参考になる点として次のような解説をしました。
① 患者による暴力行為が発生したこと自体ではなく、暴力行為が発生したときに周囲がフォローに入る仕組みが不十分であったことについて法的責任が認められた事例である。
② 業務の性質上、具体的な暴力行為の危険が予見できることから、企業として、十分な対策をすることが積極的に求められやすい事案であった。
③ 事業者側が労働者に配慮しつつ、少しずつ業務を増やしていった経緯を評価しており、企業側のなすべき対応として参考になる。
3. その他ハラスメント対応
① ハラスメント対応の流れ
社会保険労務士の先生が相談を受けることが多いパワハラの事例を参考に、事業主として必要な対応の流れを改めてご説明しました。

② 各プロセスに関する解説と対応のポイント
各プロセスの注意事項と対応のポイントを解説しました。
たとえば、事実認定を踏まえた対処のプロセスであれば、近年、企業が行なった懲戒処分等の対応を争われる裁判事例が増えています。
そのため、企業としては、より一層、各対応の法的性質に応じた十分な事前検討が必要であることなどをお伝えしました。
