いざというときに備えて知っておきたい~労災と損害賠償について~

開催日時:
2015年09月13日
セミナー分類:
労災
主催:
柏の社会保険労務士の先生方
講師:
三井 伸容 三井 伸容のプロフィール
開催会場:
アミュゼ柏

いざというときに備えて知っておきたい~労災と損害賠償について~

セミナー報告

社会保険労務士の先生方を対象に、増加傾向にある労災事故と損害賠償責任などを解説しました。
近似の労災や紛争の発生状況、会社側から見た注意点が中心です。

内容は次のとおりです。

1 近似の労災発生状況
・死亡、死傷、重大災害の各発生状況
・精神障害の労災認定状況
・上記労災発生状況と近似の傾向
・過労死、メンタルヘルス、ブラック企業問題への世間の関心の高さ、労災事件を積極的に受任する弁護士数の増加などから、労災に関する損害賠償請求が増加するおそれがあること
2 労災事件解決までの一般的な流れ
・①事故発生→②治療→③治癒(症状固定)→④示談交渉→⑤訴訟の流れ
・各段階で会社として適切に対応する要があること
3 労災と各法的責任(民事・刑事・行政その他)
・労災申請で重い後遺障害が認められた場合、会社の落ち度次第で、民事責任として高額の損害賠償責任を負う可能性があること
・会社のみならず、上司や会社代表者などの個人が責任を負う可能性もあること。実際に裁判で個人の責任が認められた事例もあること
・悪質な事案の場合、刑事責任として送検や刑事処罰のリスクがあること
・企業名の公表、官公庁の指名停止、マスコミによる報道等の重大な不利益が生じるおそれがあること
4 各段階別の注意ポイント

⑴ 治療中

  • 労災と健康保険の違い
  • 労災隠しの重大なリスク
  • 休業損害の支払い
  • 被災者、遺族との関係性の重要性
  • 労働者側が会社の責任追及を検討しているときの兆候

⑵ 治癒(症状固定)

  • 後遺障害等級に応じて大幅に損害額が変わること
  • 治療期間が長期化している場合の注意点

⑶ 交渉(示談)

  • 示談のメリット
  • 示談の際の注意事項(タイミング、事実関係調査、被災者・遺族との関係性、労災保険との支給調整など
⑷仮想事例における損害の算定例
⑸訴訟となった場合の流れ
5 過労死やメンタルヘルスに関わる労災案件について
・特徴と注意事項
・労災認定基準を踏まえた事実調査のポイント
・労災申請前や申請後の対応の注意点

本勉強会に関連する質問と回答

Q 労災事故による会社のリスクを下げる方法はありますか?
A 労災の上乗せ保険に加入する方法があります。労災保険に加入していると損害賠償を保険会社が代わりに支払います。労災事故は会社経営を揺るがすこともあります。保険加入を検討しましょう。
Q 労災トラブルが大きくなるのはどのような場合ですか?
A 死亡や重度の後遺障害など、被害の程度が重いと労災トラブルが大きくなる傾向にあります。従業員や従業員の家族と感情的な行き違いが大きいときもトラブルが大きくなる傾向にあります。従業員への誠実な対応を心掛けましょう。
Q 労災の裁判で注意すべき事項は何ですか?
A 従業員が怪我をすれば、何でも会社が責任を負うわけではありません。会社が責任を負うのは安全配慮義務違反があるときです。安全配慮義務違反の有無の判断は難しいですが、「会社に落ち度があるか」「会社の落ち度はどの程度か」がポイントです。
Q 会社に安全配慮義務違反がありそうです。ただ、従業員にも落ち度があります。このようなとき会社は損害賠償しなければいけませんか?
A 事案によりますが、一部損害賠償をしなければいけないことが多いでしょう。従業員に落ち度があるときは過失相殺をします。

たとえば、従業員が50%悪ければ損害額を50%減額するイメージです。ただし、実際には細かい計算方法があります。

労災事故の裁判の責任の有無や損害額の計算方法は複雑です。長期化することも多いです。裁判の可能性があるときは、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

参考リンク