労災事故への対応には最新のご注意を!!

Vol.63
2014年08月号

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目次
「労災事故への対応には最新のご注意を!!」 「執筆情報」

~労災事故への対応には細心のご注意を!!~

近時、過労死やメンタルヘルスの問題などで労災に注目が集まっております。今回は、実はおそろしい「労災」と「それに伴う会社の責任」について、概略をお話しさせて頂こうと思います。(1) そもそも労災保険とは??
「労災保険」とは、業務上の理由または通勤による労働者のけが等について、国が保険給付を行うものです。うつ病や過労死の原因となる病気などについても、労働者が当時置かれた状況によっては、労災に該当することがあります。労災に該当するかどうかは、通常被災者や遺族の申請をもとに、まず「労働基準監督署」という国の機関が調査し、判断することになっています。  労災であると認定された場合に給付される保険金には、大まかに分けると①治療費等の肩代わりとして支払われるもの、②休んでもらえない分のお給料の一部補償、③労災の結果障害が残ってしまった場合の補償や④不幸に亡くなってしまった場合の遺族への補償などがあります。 なお、労災が起きてしまったことについて会社に落ち度がある場合、会社が民事の損害賠償請求をされるリスクがあります。この場合、結果の重大性等によっては、数千万円から1億円を超えるような損害賠償が認められることも珍しくありません。

(2) 労災と会社側の事情
労働者にとって、労災の利用は、①原則治療費の負担がなく、②休業が長引いた場合や、事故の結果が重い場合の補償を一定程度国から受けられる点で、非常にメリットが大きいといえます。他方で、仕事をしていると、稀に会社が労災の申請をしてくれないという話を聴くことがあります。どうやら、背後には「会社が支払う保険料が増額するのではないか。」「労働基準監督署から会社へ調査が入るのではないか。」といった心配があるようです。 しかしながら、労災を隠すことは、かえって問題が大きくしてしまうというのが私の正直な印象です。具体的には、社長が労災を隠した場合、いわゆる「労災隠し」というになりますので、それが労基署にわかってしまえば、刑事処分を受ける可能性があります(厚生労働省のHP参照)。また、労災隠しをはじめとする会社側の非協力的な対応が、被害者やその関係者の不満につながり、「労災隠し」発覚の発端や先ほどの損害賠償請求リスクを誘発することも多いです。

(3)最後に
近時、過労死問題やメンタルヘルスの問題と相まって、労災への対応が会社の重要な課題となっています。今回お話しした点も含め、労災やそれが疑われる労働者への対応には、慎重な態度で臨む必要があります。少しでも対応の仕方などに不安な点があれば、問題が大きくなる前に一度専門家へのご相談頂くことをお勧めいたします。

(文責 三井 伸容)


☆執筆情報☆

当事務所の弁護士が、共著にて執筆をしましたので各弁護士から本のご紹介です。大澤一郎 執筆 (弁護士10年目までの 相談受任力の高め方)
離婚・相続・交通事故・企業法務について、弁護士10年目までの若手弁護士を対象とした研修のための書籍です。大澤は交通事故の章を担当しています。以前弁護士向けの交通事故セミナーのゲスト講師もしたことはありますが、今回は書籍という形で若手弁護士がレベルアップできるという目的のために出版しました。

川﨑翔 執筆 (交通事故における素因減額問題)
既往症のある方が交通事故で後遺症を負った場合、損害賠償額を算定する上で既往症の影響をどの程度考慮すべきかという点について、裁判例の傾向を分析した書籍です。交通事故の分野は、損害賠償の法的知識のみならず、医学知識も求められる専門分野です。今後も被害者側の代理人として、知識を深め、実務に活かしていきたいと思います。

前原彩 執筆 (慰謝料算定の実務) 【法律家必携!今、最も実務に近い慰謝料本!】
男女問題、労働問題などの一般的な分野から、刑事事件、公害・薬害に至るまで、多岐にわたる分野の実際の賠償額を紹介!また、公開されている裁判例だけではなく、和解や裁判前の交渉で終了した事件についても、実際の担当弁護士へのアンケートを踏まえ慰謝料額を分析!各分野非常にわかりやすい記載になっていますので、是非一度お手元にとってみて下さい。

松村茉里 執筆 (家族で話すHAPPY相続)
『相続』の舞台となりがちな遺産分割、法律問題のほか、不動産や税金のみな らず、測量や保険など、相続に関連する多数の切り口から注意すべき点が、できるだけ読み易さに配慮して書かれています。2013年12月13日(金)~15日(日)のアマゾンの書籍販売において、法律部門で1位を獲得したほか、日経新聞(2013/12/16)第1面でも紹介され、初版発行後1ヶ月を待たずに増版も決定するなど、非常に注目度の高い書籍ですので、ご一読頂けると幸いです!!