過失相殺率算定の実務

過失相殺率算定の実務
著者
村岡つばさ(共著)
出版社
日本加除出版
JANコード
ISBN-10: 4817848618
発売日
20230412
購入先
amazon で購入

当事務所の弁護士村岡つばさが、過失相殺が争われた裁判例を分析する書籍を執筆しました(労災事件の執筆を担当しております)。

書籍の概要

男女関係、医療、労災、スポーツ事故、消費者被害等、様々な事件分野毎(計16分野)に、過失相殺が争われた裁判例(計1108件)を分析しております。主に弁護士向けの書籍です。

担当弁護士村岡つばさからのコメント

労働者側、会社側を問わず、労災案件の取り扱いが多かったので、労災分野の執筆者(責任者)を担当させていただきました。労災分野の裁判例は156件とかなり多く、裁判例の分析・考慮要素の抽出に苦慮しましたが、執筆の過程で多くの裁判例を検討したため、個人的にも非常に勉強になりました。
特に労災案件の場合、会社の責任があることは争いようがなく、労働者にどの程度の過失があったかという点が大きな争点になることも多くあります。今回の執筆の経験を、今後の労災案件の対応に活かしたいと思います。

本書籍に関連するよくある質問

Qよつば総合法律事務所では、労災事件の取り扱いは多いですか?
A労働者側、会社側問わず、労災事件の取り扱いは多くございますので、お困りの労働者様、企業様は、お気軽にお問合せください。

労災でお困りの労働者の方はこちらのページを、企業様はこちらのページをご覧ください。

なお、村岡が講師を務めた、会社側の労災対応に特化したセミナー動画も販売されております(詳しくはこちらのページをご覧ください)。

Q労災事件では、どのような要素が労働者側の過失として考慮されますか?
A労災事案の類型毎に考慮要素が異なります。

例えば、過重労働やハラスメント等に起因する労災事案では、①既存障害、②健康管理上の問題、③業務量の調整を自ら行うことができたのにしなかった、④業務過多・体調不良等を会社や上司に報告・相談していない、⑤私生活や自らの業務上の問題行動が心身の負荷の原因になっている、といった事情が労働者側の過失として考慮されることが多いです。

他方、機械の操作や、設備等に起因する労災事案では、①労働者の行為自体の危険性の程度や、注意義務違反の程度、②社内研修・教育の有無、③労働者自身の経験といった事情が、労働者側の過失として考慮される傾向にあります(特に①が重要です)。

Q労災事故に遭った労働者側です。どのような点に注意したら良いでしょうか?
A労災事故直後については、「正確に事故の状況を伝える」ことが重要です。

会社は労働基準監督署に対し、「どのような理由で労災事故が起きたか」を報告する必要があり、この関係で、事故状況を記載した書面が労基署に提出されます。もっとも、会社の責任を軽減する観点や、労働基準法・労働安全衛生法に違反していたことを隠すために、実際の事故態様と異なる事故態様を記載した書面が労基署に提出されてしまうケースもあります。

このようなケースで、会社から「話を合わせて欲しい」「この書面にサインして欲しい」等と言われ、よく考えずにこれに応じてしまうと、後々、会社への損害賠償を検討する際にマイナスになってしまうことがあります。

また、安易に書面にサインしない、というのも重要です。特に、「示談書」「合意書」といった類の書面には注意が必要です。「本来請求できる金額より大幅に低い金額にて示談してしまった」という事態にならないように、少しでも疑問に感じたら、弁護士に相談されることをお勧めします。

Q会社内で労災事故が発生し、労働者から損害賠償請求を受けています。労災保険を使っているのに、なぜ会社が損害賠償請求を受けるのですか?
A労災保険では、被災労働者に対し一定の補償がなされます。例えば、治療費は、基本的にはすべて労災保険で支払われますし、休業損害や、逸失利益(後遺障害が残った場合や被災労働者が死亡した場合に、将来の労働に生じる影響分)の一部は、労災保険により支払われます。

ただし、労災保険では、慰謝料は一切補償されませんし、先に見た通り、休業補償や逸失利益は一部しか支払われません。そのため、会社が賠償責任を負う事案では、労災保険から支払われる金額とは別に、会社が損害賠償責任を負うこととなります。重篤な後遺障害が残ってしまったケースや、被災労働者が死亡してしまった事案では、数千万円~億を超える賠償責任が会社に発生することもあります。

特に、現場災害が発生し得る業種(建設業、工場内作業等)、長時間労働が常態化している会社では、いつ重大な労災事故が発生してもおかしくありません。

万が一の労災事故の発生に備え、労災保険とは別に、民間の労災上乗せ保険(使用者賠償責任保険等と呼ばれます)に加入することをお勧めしています。

Q労災事件が発生した場合、会社はどのような責任を負いますか?
A上で見た、民事上の賠償責任もありますが、例えば、労働安全衛生法や労働基準法に違反したことを理由に、行政上の責任や刑事上の責任を負う可能性もあります。特に、建設業や運送業等、許認可が絡む業種では、これらの違反を理由に営業停止や許可取消し等の行政処分を受ける可能性もあり、影響は非常に大きいです。

また、このような法的責任だけでなく、いわゆる「レピュテーション」の問題もあります。労働基準法等に違反し、「送検」される場合、企業名が公表されることもあります。また、SNS等により労災事故の発生が拡散されることもあり、「労災事故が発生するような会社=ブラック企業」というレッテルを貼られる可能性があります(特に過重労働やパワハラ等のケース)。

(文責:弁護士 村岡 つばさ