ランサムウェアにご注意!‐法的リスクの観点から‐

Vol.99
2017年08月号

ニュースレターをPDFで見る

目次
「ランサムウェアにご注意!‐法的リスクの観点から‐」
「ロストボールを勝手に持って帰ってしまったら犯罪なの?」
「相手の預金口座を特定する方法」「遺言書作成のススメ」「セミナー情報」 他

ランサムウェアにご注意!

‐法的リスクの観点から‐

ここのところ、ランサムウェア(Ransomware)なるウィルスが巷を賑わせています。

ランサムウェアとは…
ランサムウェアに感染したパソコンをロックしたり、ファイルを勝手に暗号化したりすることによって当該パソコンを使用不能にし、元に戻すことと引き換えに「身代金」を要求する不正プログラムのことをいいます(トレンドマイクロHP 脅威と対策<ランサムウェアのページを参照)。

つまり早い話が、パソコンの誘拐みたいなもんですね。
仕事をするにあたってパソコンは必須ですから、パソコンが使えなくなったりパソコンの中に入っているデータがすべて使用できなくなるなんてことがあったら大変です!私もすべてパソコンで文書を管理していますので、これがすべて使えなくなり一から作り直しになってしまったら絶望的な気分になります・・・。
そんなランサムウェアですが、スパムメールを開く、スパムメールの添付ファイルを開く、スパムメールに記載されているURLをクリックする、ウェブサイトからファイルをダウンロードする、などといった方法で感染してしまうことが多いようです。
が、しかし、ランサムウェアも、パソコンにきちんとセキュリティソフトを入れていたり、パソコンや使用しているソフトのアップデートをきちんと行っていたりすれば防ぐことができます。
にもかかわらずそれらを怠ったり、変なスパムメールを開いてランサムウェアに感染してしまい、会社のパソコンが使えなくなってしまった!などという場合には、法的な責任が発生する場合があります。

具体的には・・・

  • 会社がウィルス対策を怠った結果ランサムに感染し、身代金を支払うなどして会社に損害が発生したり、会社の情報が外部に流出した場合には、株主から損害賠償請求される可能性
  • ウィルスの感染によって、取引先に損害が出た場合には、取引先から損害賠償請求される可能性

などリスクだらけです!「パソコンのことは良くわからない・・・」では済まされませんので、普段ウィルス対策を何もしていない場合には早急な対応が求められます。また、万が一感染してしまい何らかの損害が発生しそうな場合には、すぐさま弁護士に相談しましょう!

(文責:前原彩)


~ロストボールを勝手に持って帰ってしまったら犯罪なの?~

ふと気が付くと、ゴルフ場の片隅にロストボールが・・・。自分も失くしたし、持って帰ろうかなと思ったことのある方もいらっしゃるかもしれません。一方、人の物なのだから持って帰るのは窃盗なのではないか、と思った方もいらっしゃるかもしれません。では、ロストボールを持って帰ってしまったら、窃盗罪が成立するのでしょうか。今一度刑法を確認してみましょう。

刑法235条

窃盗罪について定める刑法235条は、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と定めています。つまり、「他人の財物」を盗んだ場合、窃盗罪となる旨が規定されています。そして「他人の財物」と認められるためには、他人の占有下にあることが必要とされています。「占有」とは、その財産を事実上支配していることを意味します。

ロストボールの占有は誰がしている?

「あれ?ロストボールは放置されているのだから、誰も事実上支配していないのではないか?」と思った、鋭い方もいらっしゃるかもしれません。  確かに、ロストボールには、一見誰の支配も及んでいないように見えます。しかし判例は、 「ロストボールであるが、ゴルフ場側においては、早晩その回収、再利用を予定していたというのである。…無主物先占によるか権利の承継的な取得によるかは別として、いずれにせよゴルフ場側の所有に帰していたのであって無主物ではなく、かつ、ゴルフ場の管理者においてこれを占有していたものというべきである」(裁決昭62・4・10)と判断しました。  よって、ロストボールにはゴルフ場管理者の占有が認められ、ロストボールは「他人の財物」となります。その結果、ロストボールを持って帰ってしまったら、窃盗罪が成立することとなります。

最後に

ただし判例は、深夜密かにゴルフ場内へ侵入し、ウェットスーツを身にまとって池の中へ入り込み、熊手・網袋等の道具類を使って池の底から大量のロストボールを拾ったという、特異な事件でした。正規料金を支払いプレーするゴルファーがたまたま見つけたロストボールを1個拾った場合とは事案が異なりますが、甘く考えないようにしていただきたいと思います。 日常の様々な場面に刑法は深く関係しています。日常でふと感じた小さな疑問でも、お気軽に弁護士までご相談ください。

(文責:根來真一郎)


~相手の預金口座を特定する方法~

貸したお金を返してほしいが相手に全く返す気がない、売買代金を払ってほしいが相手が全く支払わない。このように相手が全く支払う気がない場合には、弁護士が介入しても交渉では解決せず訴訟までいくことがあります。もっとも、訴訟で勝っても相手方に財産がなければ債権を回収することはできません。今回は、債権回収の際に、相手方の預金口座を特定する方法についてご紹介します。

1.相手の預金口座から強制的に債権を回収

裁判に勝ちますと、相手方の財産から強制的に債権を回収する手続きを取ることができるようになります。このような場合に、多くとる方法が、相手方の有する預金口座から債権を回収する、【債権執行】という方法です。
もっとも、預金から債権を回収する際に裁判所は相手方の預金口座の場所を調査したりはしませんし、相手の預金口座がどこにあるかこちらで特定していないと、債権執行は行ってくれません。

2.どこまで相手方の預金口座を特定する必要があるの?

どこまで相手方の預金口座の情報が分かれば、その預金口座からお金を回収できるのでしょうか。その答えは、①銀行名、②支店名、の二つです。
「○○銀行△△支店」に相手方の預金口座がある、と分かっていれば、口座番号が分からなくても、普通預金なのか定期預金なのかの預金の種類が不明でも債権執行を行うことができます。

3.相手方の預金口座を特定する方法は?

相手方の預金口座を把握していることはあまり多くはありません。もっとも、相手方と以前取引を行ったことがあれば、契約書に相手方預金口座の記載があったり、経費のやり取りで相手方の預金口座の情報を知っていたりすることがあります。
弁護士に依頼する場合には、弁護士会から銀行に対して相手方の預金口座の有無等を照会するという方法があります。若干の費用と時間がかかりますが、その銀行に相手方が口座を保有しているかどうか、保有しているとしたらどこの支店に口座があるか、が一遍に分かります。(※弁護士会は、都道府県によって照会可能範囲が異なります。全ての銀行が、弁護士会からの照会に回答しているわけではありません。)

4.おわりに

相手の使用する預金口座が分かれば、支払う意思のない相手からでも債権を簡単に回収できる可能性があります。債権回収については一度専門家に相談してみるといいでしょう。

(文責:大友竜亮)


~遺言書作成のススメ~

「お父さんが遺言書を書いてくれれば、こんなに揉めることはなかったのに…。」
相続の相談に来られるお客様から、このようなお話を良く耳にします。今回は、「遺言書作成のススメ」と題して、遺言書を作成する意義等について、お話させていただきます。

1.遺言書を作成する意義は?

遺言書は、遺言者の生前の意思を相続人に伝えるという重要な役目を果たします。
例えば、「長男は老後の面倒を見てくれたが、次男は全く顔も見せない。長男に全部財産を相続させてやりたい。」と考えた場合、その旨の遺言書を作成しておけば、基本的にはその意向に沿った相続を実現できます(遺留分の問題は残りますが、ここでは割愛します。)。
一方、遺言書を作成しなかった場合は、基本的には法定相続分に従って遺産分割をすることとなります。すなわち、上記のような事情・被相続人の意向があったとしても、基本的には、長男と次男とで、1:1で相続財産を分けることとなります(寄与分の問題はここでは割愛します)。
長男にしてみれば、「自分はずっと老後の面倒を見てきたのに、どうして次男と同じ相続分なのか」という不満が残ります。もちろん、相続人間で法定相続分と異なる割合での遺産分割を行うことは可能ですが、一方が応じない場合には、最終的には裁判所で決着をつける必要があります。
このように、遺言書を作成しておくことにより、相続人間の紛争リスクをぐっと減らすことが可能となります。この点が、遺言書を作成する一番の意義と言えるでしょう。

2.遺言書の種類

作成されることが多い遺言として、①自筆証書遺言と、②公正証書遺言があります。①は、相続人自身が手書きで作成する遺言であり、②は、公証役場という場所で、公証人・証人立ち合いの下で作成する、公的な遺言です。
弁護士の立場からすると、②の公正証書遺言を作成することをオススメします。
まず、①の自筆証書遺言は、有効とされるための要件(全文を自書、日付・氏名の記載、押印等)がいくつかあり、この要件を満たさなければ遺言は無効とされてしまいますが、②の公正証書遺言はそのような要件はなく、遺言が無効とされるリスクはほぼありません(重度の認知症等の場合無効とされる可能性はあります。)。
また、①の場合には、本当に本人が作成した遺言なのか(偽造されたものではないか)をめぐって相続人間で紛争になることがありますが、②の場合はそのような問題はありません。
さらに、①の場合には、遺言書の内容を裁判所で確認する「検認」という手続が必要(これを怠ると、5万円以下の過料に処される場合があります。)ですが、②の場合はこのような手続は不要であり、相続人の負担も軽いといえます。
このように、公正証書遺言の方が、?遺言が無効とされるリスクがほぼない、?相続人間の紛争リスクを減らすことができる、?相続人の負担を軽減できるという点で、自筆証書遺言よりも優れているといえます。
ただし、公正証書遺言を作成する場合、作成手数料を公証役場に収める必要があります。具体的な手数料は、相続財産の額や、遺言の内容によって異なりますが、例えば、総額4000万円の財産を1人の相続人に相続させる内容の公正証書遺言を作成する場合には、手数料として4万円がかかります。 なお、体調の問題等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して公正証書遺言を作成することも可能です(この場合、手数料が高くなる+日当・実費がかかります)。

3.おわりに

以上、非常にザックリとではありますが、遺言書全般について説明をさせていただきました。遺言書の作成も含め、相続でお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください!

(文責:村岡つばさ)


★セミナー情報★ 最近のセミナーのご報告です。

不動産業者様向け
2017年4月7日 講師:弁護士 大澤 一郎
『借家関係を解消して不動産を有効活用する方法』
借家についてのセミナーを開催いたしました。借家関係を解消するための方法や期間満了による正当事由の判断要素及び正当事由を満たすための方法、立退料についてなどをお話させていただきました。不動産業者様向け
2017年6月16日 講師:弁護士 川﨑 翔
『不動産会社様が知っておきたい家賃対応と立退き問題への法的対応策』
家賃滞納案件について、初期対応・訴訟提起・強制執行の側面からのセミナーでした。過去の実例などもふまえながらお話しさせていただきました。

保険代理店様向け
2017年6月23日 講師:弁護士 今村 公治
『弁護士による正しい初動対応』
交通事故の被害者・加害者になってしまったときの正しい初動対応や相続の相談が来たときの初動対応などについてお話しさせていただきました。

<<今後のセミナー開催予定>>

保険代理店様向け 2017年10月12日(木)場所:パレット柏 企業様向け 2017年10月17日(火)場所:パレット柏 不動産会社様向け 2017年10月23日(月)場所:パレット柏
当事務所では定期的に弁護士によるセミナーを開催致しております。
気になるセミナーがありましたらお気軽にお問い合わせください。
セミナーの最新情報は下記HPにも掲載中です!
よつば総合法律事務所 企業法務サイト (http://www.yotsubasougou.jp/)