債権回収のポイント

Vol.42
2012年11月号

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目次
「債権回収のポイント」
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債権回収のポイント!

事業をしていると、売掛金の未回収が増えてきます。たくさんの裁判をしてきた経験から、売掛金の回収にはいくつかのポイントがあります。1 相手に差押え可能な財産があるかどうかが一番重要
裁判で1億円勝ったとしても、裁判所から1億円が振込されるわけではありません。「自分で財産を見つけてくれば差押えしてあげますよ。ただし、成功するかどうかにかかわらず裁判所の手数料は支払ってね」というのが極論すると裁判所の立場です。差押え可能な財産のメインは土地建物、売掛金、預金ですが、調査するのが難しい権利もあります。差押え可能な財産をどれだけ知っているかどうかがまずは重要です。
2 裁判になると急に嘘を付いて争う人がいること
今までは支払う義務があることを認めていたのに、裁判になると突然相手に弁護士がつき「支払う義務はない。」「一部支払う義務はない」と言ってくることがあります。例えば建設工事だったらささいなミスがあるとして争ってきたり、商品の売買契約であれば商品に問題があるとしてクレームをつけるようなケースです。これを防ぐためには、契約書で責任の所在を明確にしておくこと、「納品を受け問題がないことを確認した」旨の書面に署名してもらっておくこと等があります。いずれにしても裁判前の対応が大切です。
3 時効に注意
権利には時効期間というものが定められています。権利の種類によって支払日から1年、2年、3年、5年、10年等です。時効になってしまうと請求できませんので「債務承認書」等を相手から取得する必要があります。
4 譲歩してでも一部入金させることが重要な時もあること
裁判の場合、時間もお金もかかります。相手が争ってきたら1年以上かかる裁判もあります。また、裁判の準備の打ち合わせや会社内で過去の書類を探す作業等も考えると、膨大なコストと手間がかかります。(もちろん弁護士費用もかかります。)
納得いかない点もあるかもしれませんが、会社経営のためには、全体を見て判断することが重要なこともあります。かかる時間・コストと入金される確率を踏まえた判断が必要です。単に裁判に勝つ、負けるという話ではなくて、会社経営にとってどうかという観点からの決断が重要です。

(文責 大澤一郎)