休業手当と計画停電

Vol.22
2011年03月号

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目次
「休業手当と計画停電」

休業手当と計画停電

東北地方太平洋沖地震で被害に遭われた方、ご家族、ご関係者の方々に心よりお見舞申し上げます。「休業手当」という言葉をご存知でしょうか。
労働基準法26条には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合」、休業期間中、使用者は労働者に対して、平均賃金の60%を支払わなければならないと規定されています。つまり、使用者に責任のある休業の場合、労働者に対して「休業手当」を支払わなければならないのです。

そこで問題となるのが今回の地震に伴う計画停電を理由とする休業です。
とある会社の例をみてみましょう。
製造業を営むA会社の社長は、ある日、計画停電の時間が日中であったことから、その日を休業とすることにしました。すると、従業員のBさんから「会社が休業にしたのだから、休業手当を払ってください」と言われてしまいました。A会社はBさんに対して休業手当を支払わなければならないのでしょうか。

これについて、厚生労働省労働基準局の通達(平成23年3月15日基監発0315第1号)は、「計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業」については、原則として、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合」に該当しないとしています。したがって、使用者は休業手当を支払う必要はありません。
そこでA会社の社長は、Bさんに対して、計画停電は、会社の責任による休業ではないので休業手当を支払う義務がないことを説明しました。すると、Bさんは「計画停電の時間帯については納得しましたが、計画停電以外の時間については、納得がいきません。計画停電以外の時間については休業手当を払ってください。」と言っています。社長は困ってしまいました。

この点について、前記通達は「計画停電以外の時間帯の休業は、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業に該当する」としています。
しかし、一方で、「計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない」としています。

官僚的な文章なので非常にわかりにくいですが、例えば、計画停電の時間帯が業務時間の大部分にかかっており、実質的に稼働できる時間が短く、経費ばかりが増えてしまうというような事情があれば、一日休業としても、休業手当を支払う必要がないものと考えられます。

いずれにしても、各会社の事情等を「総合的に勘案」する必要があるので、対応については、弁護士等の専門家に相談されることをおすすめします。

(文責 弁護士 川﨑 翔)