最近のニュースを経営に活かす
- Vol.26
- 2011年07月号
- 目次
- 「最近のニュースを経営に活かす」
- 「取引先の破綻と債権回収(2)」 他
ニュースレター7月号では、ニュースレター5月号に続き、取引先からの債権回収(2)をお伝えします。
例えば、取引先が別の会社に対して売掛金を持っている場合です。その場合、取引先からその債権の譲渡を受け、あなたが譲り受けた債権を第三者に対して行使することにより、債権の回収を図ることができます。
債権譲渡は原則として自由にできますが、債権譲渡を第三者に対抗するには、確定日付ある証書により、取引先から第三債務者に対して譲渡の事実を通知させる必要があります。内容証明ならば確定日付がありますので、内容証明を用いて、取引先に譲渡の通知をさせましょう。
(2)自社製品・他社製品を回収する
売買契約を解除し、所有権に基づいて回収しますが、取引先の承諾が必要になります。また、他社の製品を取引先から譲り受けることにより、代物弁済として債権の回収を図ることができます。もっとも、この場合はもともと第三者の財産だったものですから、「自社の製品を回収する」場合よりもさらに取引先の同意書を取っておく必要が高くなります。
いずれの場合も、同意書がない場合は窃盗罪に問われる恐れがあります。さらに、この場合は取引先も容易に同意書を交付しないかもしれません。
そこで、取引先に対し、「弁済するまでこの製品は預かっておく」と申し向け、預かり証を取引先に交付する、という手段も考えられます。ただ、一つ間違えば危険な方法ですので、実行する場合は弁護士に相談下さい。
(3)その他法的手続きによる回収
正式な裁判、支払督促、民事調停、仮差押等、法的な手段による回収方法もあります。これらの方法は裁判所を利用する方法となりますので、手続きが複雑になるかもしれません。これらの方法を行う場合には弁護士等の法律の専門家にご相談下さい。なお、仮差押は、裁判所を使って、取引先が有する預金債権、売掛金債権を差押えする方法で、使い方によっては大変な効果があります。しかしながら、裁判所での審査が厳しい傾向にあります。特に、経験上、都会の裁判所ほど審査が厳しい傾向にあります。具体的には、書面によって権利の存在と、今手続きをしなければならない必要性を証明しなければなりません。手続きとしては難易度が高い手続きと言えるでしょう。
(文責 大澤一郎)
ニュースレター7月号では、よつば総合法律事務所代表社員弁護士の大澤が、最近のニュースを経営に活かすという観点から解説します。
?
(大澤解説)一般に、名誉毀損・業務妨害を理由とする損害賠償請求というのは裁判所で請求が認められる確率が低い事件です。また、認められたとしても金額が少額となりがちです。今回の橋本知事のケースでも一番多額が認められた地方裁判所の判決でも800万円です。(800万円は同様の事案としてはかなり高額です。)
(経営に活かすポイント)名誉毀損・業務妨害等の場合には、最終的にどんなに被害を受けていても「やった者勝ち」となってしまうことが多いような印象を受けます。インターネットの普及した現在、個人であったとしても簡単に他人の名誉を毀損する発言をすることができます。会社経営にあたっては、無意味に恨みを買うことのないような経営を心がけたいものです。
・賃貸借契約の更新料は有効との初判断(7月15日最高裁判決)
賃貸借契約更新の際に契約に入っていることが多い更新料について最高裁判所は有効との始めての判断を示しました。
(大澤解説)今回の裁判で、貸主は一安心というところだと思います。今回の裁判の更新料は「1年ごとの更新、更新料は家賃の2ヶ月分、月額家賃38000円」という事案です。関東では余りなじみのないタイプの賃貸借契約ですが、関西ではよくある契約のタイプです。ただし、高額に過ぎるという特段の事情がある場合には更新料は無効となると考えられています。
(経営に活かすポイント)貸主としては、更新料の返還請求をされる確率が極めて低くなったという意味では、経営の目安が立てやすくなったといえます。ただし、更新料が広くニュースで取りあげられてしまったということからすると、賃料・更新料・敷金・保証金についての総合的な費用のバランスをとり、魅力的な物件となるような工夫がより一層必要となると思われます。他方、物件を賃借している方は、契約締結の際に更新料の話題を出して、更新料の減額、毎月の賃料の減額を要請してみることが交渉の上ではよいでしょう。(今回は貸主・借主双方の立場からの説明であることをご了承下さい。)
(文責)大澤一郎